仕事で活かすための戦略的読書術

本を読むということは一般的には良いこととされていますが、それを実生活、特に仕事で活かすということは意外とできていない人が多いのではないでしょうか。もちろん、楽しむための読書(小説)であれば読むこと自体が目的なのですが、実用書・ビジネス書は読むことではなく、それを仕事に活かすことが目的になると思います。

この記事では読書を仕事で活かすための戦略的読書術を紹介したいと思います。

読書を仕事で活かせない原因

そもそも読書を仕事で活かせない原因は何でしょうか?

それには大きく4つの原因があると思います。

  1. 読書の目的が明確ではない
  2. 本の選び方が悪い
  3. 本の読み方が悪い
  4. 読んだ内容を活用できていない

1. 読書の目的が明確ではない

読書のきっかけには、仕事での悩みや失敗、あるいはこれからの挑戦に向けてといったものがあると思います。しかし、このきっかけというのはあまりにも漠然としているため、きちんと自分自身の課題を明確にした上で、読書の目的を定義する必要があります。

例えば、上司に資料の出来が悪いと指摘を受けたとしましょう。しかし、そこで「資料作成」と題のついた本に手を出してはいけません。まず、自分自身の課題は何かを明確にしましょう。

資料作成という中にも様々なプロセスがあります。まずは資料の構成を考えなければいけません。その上で、インターネットから調査したり、インタビューをしたりし、必要な情報を集めます。集まった情報・データを資料に掲載するため分析・加工をする必要があります。そして最終的にパワーポイント等の形式の資料を作成していくことになります。

このようなプロセスの中で、資料の出来が悪くなっているポイントはどこかを明確にします。例えば、良質な情報・データを集めることができていないこと、つまり、情報・データの収集が原因だとしましょう。更に、そこからなぜ、良質な情報・データを集めることができないのか原因を追及していくことで調査前の「仮説構築」が最大の課題であることが分かります。

このように自分自身の課題を明確にすることで、読書の目的もより明確になり、どのような本を読むべきかということもおのずと見えてくると思います。

この課題(目的)の明確化は、読書を仕事で活かすために最も重要な点である一方で、非常に難しいポイントでもあります。

独力で行う方法は、直面する問題に対してなぜ、なぜという問いを繰り返すことです。例えば上記の例だと、「資料の出来が悪いのはなぜ?⇒資料内の情報の質が悪いから」、「情報の質が悪いのはなぜ⇒調査を上手くできていないから」、「調査が上手くできないのはなぜ?⇒調査前の仮説構築が正しくできないから」といった具合に課題を追及していきます。

その他、人に聞くというのも一つの手段だと思います。上司から指摘を受けたのであれば、その上司にどこが良くないのか素直に教えてもらえば、課題をピンポイントで特定することができます。

2. 本の選び方が悪い

日本では年間70,000冊以上の新刊書籍が出版されており(総務省「日本の統計」より)、累計するととてつもない数の本が世の中にはあります。その中には、良書もあれば悪書もあります。

ショウペンハウエルの「読書について」では次のような言葉があります。

良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。

限りある時間で、仕事に活かすための読書を行うには、書籍の選定プロセスが非常に重要になります。自身の目的に最も適した良書を選択することが重要になります。しかし、基本的には書籍を購入し、読まなければその本が良いか悪いか判断することはできません。では、どのように本を選べばよいか、以下おすすめする順に紹介したいと思います。

人からの紹介で選ぶ

人に良書を紹介してもらうことが最もおすすめする本の選定方法です。但し、誰でも良いわけではありません。前述の通り、仕事で活かすための読書はきちんと目的を定義した上で行う必要があります。しかし、誰もが同じ目的を持っているわけではないというのは当然のことです。なので、同じ目的を持っている(持っていた)であろう人に紹介してもらうのです。

仕事上の課題であれば、上司は過去に同じ課題に直面したかもしれませんし、同僚は同じ悩みを抱えているかもしれません。そのような人物に自身の課題を正確に伝え、おすすめの本を紹介してもらうことで良書に出会う確率が高まります。また、周りに同じ課題を持つ人物がいなければ、インターネットで探すのがおすすめです。大抵の場合、課題をどのように解決したのか、ブログ等でまとめている方がいると思いますので、その方が困ったときにどのような本を読んでいたのか調べるのが良いと思います。

注意が必要なのは、著名人が読んでいるから、紹介しているから読んでみようというのは良くありません。なぜなら、そのような職業や社会的なポジションの異なる著名人が自身と同じ課題を抱えている可能性は非常に低いからです。そのような本ももちろん学びにはなると思いますが、定義した目的を達成することは難しいでしょう。

作者から選ぶ

人から良書を紹介してもらうことが難しい場合は作者の経歴や過去の著作物を基に判断しましょう。その作者がどのような大学を出て、どのようなキャリアを歩み、どのような実績を残したのか。あるいは、過去どのような著書を出版し、どのような評価を得たのか。このような情報は書籍を購入せずともインターネット上で入手することができます。

自分自身と同じようなキャリアを経験しているか、その道にどれほど精通しているか、といったことを評価し、自身の課題を解決するに足る経験値・能力があるかを判断し、その上で本を選定しましょう。

ショップの評価で選ぶ

この方法はあくまで最終手段の位置づけです。上述の通り、本は自身の目的を達成するために読むのであり、目的と整合している必要があります。なので、様々なバックグラウンドを持つ人が評価をしているAmazon等のショップの評価はあまり参考にはなりません。

しかしながら、多くの人数が良い評価をしているということは少なくとも悪書ではないという確証を得られます。そして目的を達成することはできなくとも、自身の課題を更に細分化、明確化することができ、次の書籍選定に役立てることができます。

3. 本の読み方が悪い

書籍の分類による読み方の使い分け

全ての本を同じように始めから最後まで同じテンポで読むことはおすすめしません。本の種類によって内容はもちろん情報の粒度が大きく異なり、目的を達成するためには、不要な部分もあるからです。

例えば、ノウハウ・テクニックに関する本を最初から最後まで読んでもあまり意味はありません。仕事での目的を達成するために必要な部分は限られていることが多いからです。一方で、価値観・イデオロギーに関する書籍は、書籍全体で一つのテーマについて論じられているため、全体をじっくり読んでいく必要があります。(尤もこのような書籍が仕事で役立つ機会は少ないかもしれませんが…)

下図のように自分が読もうとしている(あるいは読んでいる)書籍はどのような分類なのかをきちんと意識した上で、それに応じた読み方を行うことで、より効率的に書籍からの学びを生活・仕事に活かすことができます。但し、これはあくまで一例なので読む頻度・読み方は自分にあった方法を見つけるのが良いと思います。

考えながら読む

本を漫然と読むことは当然ながらおすすめしません。本を読むということは決して暗記するためではなく、実生活で活かすための行為です。そのため、読んだ内容を自身の血肉とし、すぐに活用できるようにしなければいけません。これを達成するためには、考えながら読むことが重要です。

具体的には次の3つを実践しながら読書することが有用と考えます。

比較

まずこれは基本的なことですが、書籍の内容と自身の目的を比較し、きちんと整合しているかどうかを検証しましょう。その上で、自身の目的を達成するために書籍の内容をどのように活かせそうか、また、どのようにカスタマイズすれば活用できるかを考えましょう。

例えば、リサーチ方法に関する書籍を読んでも自身と同じテーマでのリサーチ方法が紹介されるということはまずないでしょう。しかし、リサーチという枠組みにおいては活用できるテクニック・ノウハウは共通して存在しており、また、一部を改良することで様々なテーマのリサーチに活用することができます。

このように書籍の内容を自分自身の置かれている立場と比較しながら読むことで、即座に活かせる知識・能力を身に着けることができます。

最新化

本の内容は出版日よりも古い情報が掲載されていることがほとんどです。というのも、書籍は執筆を行い出版するまで時間を要するからです。なので、書籍の内容をきちんと最新化する必要があります。もちろん、余程の古い書籍を選択しなければ、大抵の内容は現在でも通用することが多いのですが、部分的に最新の状況が異なる可能性があります。そのため、インターネットや雑誌等を活用し、最新の情報にアップデートしていく必要があります。

思考方法・価値観といった内容であれば、変化はあまりありませんが、テクノロジーやビジネストレンドは日々変化しているものなので、スマートフォン等を傍に置き、最新の情報と併せて読み進めていくことをおすすめします。

結びつけ

これは少し発展した読み方ですが、読書を仕事に活かすためには非常に重要な概念です。前述の通り、読書の目的を定義することが重要で読書はその目的を達成するために行います。一方で、単に設定した目的を達成するだけではもったいなく、本の中で得た学びを抽象化し、他の課題に結びつけることができるとより良い読書体験をできます。

例えば、リサーチ方法における本を読み、リサーチにおける仮説構築の方法を学びます。この仮説構築の方法をより一般的な考え方に変換し、リサーチという文脈のみならず、他の業務(営業、事務作業、商品開発 等)においても活用しようと試みるのです。

この結びつけを行うことにより、一つの読書により多様な課題の解決を実現することができるのです。そして、この結びつけを行うことにより、読書によりバラバラに得られた知識が徐々に関連し合い、体系的な知識の集合となって広範な仕事での活用ができるのです。

この結びつけを実践することは難しいのですが、日々の読書の中で、得られた学びが他の課題にも適用できないか意識的に考えることが重要です。

4. 読んだ内容を活用できない

上記を実践し読書を行えば、大抵の場合は仕事に読書で得られた学びを即活かすことができると思います。一方で、読書の内容をきちんと身につけられていない、あるいは、活用の場がすぐにはないということもあるかと思います。そのような場合は、読書内容をきちんと自身の血肉とし、活用に備えるためアウトプットすることをおすすめします。特に誰かに発信するアウトプットがより効果的です。

対外的にアウトプットするということは、誰かに本の内容を教えることと同義です。人に分かりやすく教えるためには内容を完璧に理解していなければできず、そのために更に本への理解を深めることができるのです。例えば、以下のような内容を実践することをおすすめします。

要約する

  • 書籍の内容を500字程度で簡潔にまとめる。
  • 重要な部分とそうでない部分にきちんと濃淡をつけてまとめる。

感想を書く

  • 書籍を読んだ自分なりの解釈や感じたことをまとめる。
  • SNSや読書メーター等のソーシャルメディアに投稿するのがおすすめ。

紹介・説明する

  • 本の内容を他人に紹介・説明し、「読みたい」と思ってもらう。
  • 魅力を自分の言葉で説明できるようになれば、その書籍を理解したと言える。

注意が必要なのはアウトプットすることが目的ではないということです。アウトプットはあくまで当初定義した目的を達成するための手段なのです。アウトプットすることにより、本の内容を深く理解し、仕事で活用できるレベルまで身に着けることが必要なのです。

まとめ

下図が上記の内容をステップに簡単にまとめたものです。

これらを実践すれば、大抵の場合は読書を仕事で活用することができると思います。できない場合は、いずれかのステップで上手くいっていない可能性があります。一度、読書の目的を明確にする所に立ち戻り、再度ステップを進めていくことをおすすめします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました