我々は日々の仕事、生活の中において数えきれない程の質問をします。コミュニケーションにおいては質問は必須です。質問に対して回答を行うことを基本に日々のコミュニケーションは成り立っています。
質問というのは相手から情報を引き出すだけではなく、相手の自発性を引き出し行動するきっかけをつくることができます。特にビジネスにおいては、日々の課題に対して自分が行動するだけではなく、関係する人たちを行動させることが必要不可欠です。相手を行動させる質問を行うことでより仕事を円滑に進めることができます。
本記事では、基本的な質問の特性を概観した上で、相手を自発的に行動させる質問を行うための方法について紹介したいと思います。
質問を行う意義
質問を行う意義には次のような意義があります。
- 相手が持っている情報を引き出す
- 相手の性格や能力を推し量る
- 相手の考えや意見を引き出す
- 会話を盛り上げる
- 相手の自発的な行動を促す
ビジネスにおいては、「相手の自発的な行動を促す」という意義が大切になります。
人を行動させるというのは非常に難しいことです。特に、他人からお願いされたことについては、必ず抵抗が発生します。
例えば、あなたが非常に忙しい状況で、面倒な仕事を依頼されたらどうでしょうか。仕事だから仕方ないと取り組みますが、決して積極的には取り組めないと思います。
それは、自分自身で決定していないからです。相手からの指示にただ従うだけでは、やる気も出ないですし、仕事への責任感も薄くなってしまいます。逆に、自分自身で決定したことについては、一生懸命取り組みますし、責任感も強く持つのです。
“質問を行うことにより、相手に決定させる”これが質問力の肝です。質問を単なるコミュニケーションのツールとしてだけではなく、相手の行動へとつなげるドライバーとしても活用することができます。
質問を行う際は、その質問により達成したい目標を明確にする必要があります。その目標を達成するにはどのような質問が必要かを考えていくことが良い質問をするための基本となります。
質問の特性
こちらが質問を行うと、相手は質問を理解し、回答を考え、言葉として回答を表現します。どんなに些細な会話においても人は、回答をきちんと考えてから回答を行うはずです。
この回答を思考するプロセスにおいて、質問により相手を動機付け、納得させることによって、相手が行動を起こすきっかけをつくることができます。
質問する側は、相手がどのように回答を考えるか、きちんと狙いを持った上で質問を行うことが重要です。
質問の種類
質問の形式には大きく「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」の2通りがあります。
クローズドクエスチョン
クローズドクエスチョンとは、「はい(Yes)」か「いいえ(No)」で答えられるような質問や回答が限定されている質問です。
- あなたは20歳以上ですか?
- あなたは運転免許を持っていますか?
- 会議の日程は明後日でしたよね?
クローズドクエスチョンは初対面の相手との間で徐々に会話を広げていくような場面に適しています。
例えば次のような質問の仕方をします。
- 休みは土日?
- 休みの日はのんびりしてる?何か趣味に時間を使う?
- アウトドア派?インドア派?
その他、シンプルに答えを早く知りたい場合や、話を長引かせたくない場合などに適しています。
一方で、クローズドクエスチョンは回答が限定されているため、相手の意見を引き出すことが難しいです。また、相手は質問にしたがって思考するため、相手の自発性を促すことが難しく、相手を行動させる質問をすることが難しくなります。
オープンクエスチョン
次にオープンクエスチョンとは、回答を限定せずに、相手が自由に回答できる質問です。
- その趣味にはまったきっかけは何ですか?
- なぜその仕事をはじめられたのですか?
- その仕事の魅力は何ですか?
オープンクエスチョンでは、相手の意見を引き出すことに適しています。回答が限定されていないため、相手は自由に考え回答することができます。さらに、オープンクエスチョンは、相手を動機付けることにも適しています。人は自らが納得したことに従い行動を行います。自分が自由に考えたことには、納得して行動を行うことができます。
相手の自発的な行動を促す質問
それでは具体的に相手の自発的な行動を促す質問について見ていきたいと思います。
上記の通り、相手の思考する回答に狙いを持つこと、オープンクエスチョンにより回答することが重要となります。
話を分かりやすくするために次のような場面を
Aさんに資料作成を依頼していたが、ツールを上手く使えず納期に遅れている。
原因を明確にする
まずは、Aさんの状況をきちんと把握するための質問を行います。
質問の狙い
Aさんの状況に対してきちんと理解を示し、寄り添うことで、Aさんの自発性をより引き出すことができます。原因も理解せずに命令だけを行っても、Aさんはやる気をなくしてしまいます。
また、原因に対する対策を考えさせることにより、相手は次の行動に責任を持って取り組ませることができます。
質問(オープンクエスチョン)
質問の仕方も重要です。「なぜできないのか」を聞くのではなく、「どうすればできるのか」を聞いてあげることで、Aさんはよりポジティブに考えることができます。
良い例
悪い例
良い例は、相手にできないことの原因と対策を考えさせています。こちらが一方的に指示をしているのではないため、相手は自身の行動を裁量を持って決めることができます。
一方で、悪い例は過去の失態を追及しており、未来への行動に対する自由がありません。これでは、相手のやる気は失われてしまいます。
行動を動機付ける
次に行動への動機づけを行うための質問を行います。
質問の狙い
人が行動を起こすには動機付けを行う必要があります。動機となるポイントには次のようなものがありますが、相手の状況、性格、立場などを踏まえ、適切な動機付けを選択しましょう。
- 欲求:行動することにより報酬などがもらえる
- 危機感:行動しないと罰などが与えられる
- 自尊心:行動することにより周囲の評価が上がる
- 達成感:何かを成し遂げたい
- 好奇心:何かをやってみたい
質問(オープンクエスチョン)
例えば、Aさんの場合では次のような動機付けを行うことができます。
- 欲求:納期通り達成できれば、どれくらい営業成績が上がると思いますか?
- 危機感:今後も納期が遅れると、クライアントの評価はどうなると思いますか?
- 自尊心:納期通り達成できれば、会社からのAさんへの期待はどうなると思いますか?
- 達成感:納期通り達成できた時、どのような達成感を得られると思いますか?
- 好奇心:納期より早く完成させ、別の仕事にチャレンジしてみたくないですか?
ここでもポイントは相手に決定させることです。
「これを頑張ったら営業成績がつくから」、「これできなかったらクライアントの信頼を失うから」というように、こちらから動機づけを行うと、どうしても相手は”やらされている感”を感じてしまいます。短期的な解決にはなるかもしれませんが、長期的には徐々にやる気を失ってしまう可能性があります。
質問により、Aさん自身に未来のイメージを想像させることで、より自発的に行動させるための動機づけを行うことができるのです。
行動を促す質問
そして、具体的な行動を起こすための質問を行います。
質問の狙い
相手の行動を促すには、相手に自由に決めさせることが重要です。人は、自分が考えた/納得したことに対して、自ら責任を感じ行為を全うしようとします。「~しろ」と命令するのではなく、質問により自ら決めさせるようにしましょう。
質問(オープンクエスチョン)
良い例
悪い例
良い例では、行動をAさん自らに考えさせています。課題の解決に向けて、解決策を自ら決定することで、決定したことに対して責任を持って行動することが期待できます。
悪い例では、Aさんに対して行動を命令しています。これでは、Aさん自身が決めた行動ではないため、Aさんは責任を持って行うことができません。
まとめ
以上のように質問には、会話を盛り上げたり、情報を引き出したりする以外に、相手の自発的な行動を引き出す手段としても活用することができます。
相手が回答を思考するプロセスに着目し、適切な質問を行うことによって、相手を動機付け、納得させることによって、相手が行動を起こすきっかけをつくることができます。単に行動を命令するのではなく、質問により行動を促すことで、よりポジティブな働き方ができると思います。
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