コンサル流「良いプレゼン資料」を作成するための考え方・テクニック

多くの企業においてプレゼン資料を用いた会議、コミュニケーションが行われています。コンサルタントとして働いているとクライアントの会議で用いるプレゼン資料を作成する機会が非常に多いです。私の数年間のコンサル経験の中でも数百枚にも及ぶスライドを作成してきました。その中で上長やクライアントにダメ出しを受けながら、「良いプレゼン資料」とは何か徐々に理解することができました。

本記事では私の経験を基に、良いプレゼン資料を作成するための考え方やテクニックを紹介したいと思います。

プレゼン資料の目的とは

プレゼン資料の究極的な目的は、「読み手の意思決定・行動を実現すること」です。

プロジェクトにおいて取り組みたいことがあっても、マネジメント層の承認を得る必要がある場合には、そのマネジメント層のメンバーの「OK」という意思決定を促すためにプレゼン資料を利用します。

また、顧客に対してサービスを提供する場合には、顧客のサービス利用という行動を促すためにプレゼン資料を利用します。

大切なことは、プレゼン資料を作成することが目的となってはいけないということです。プレゼン資料作成が目的となると、ボリュームがあり、綺麗な資料を作成することに傾倒してしまうおそれがあるからです。その場合、不必要な資料、無駄に綺麗な資料を作成してしまい、時間や労力を浪費してしまいます。

プレゼン資料は、読み手の意思決定・行動を実現する「手段」であるということを常に意識することが重要です。最終的なゴールである意思決定・行動を実現することを念頭に、どのようなボリュームで、どの程度のクオリティの資料が必要か考えましょう。そうすることによって、必要最低限の資料をスピーディーに作成することができます。

良いプレゼン資料とは

良いプレゼン資料を何か定義することは非常に難しいです。良し悪しの判断は、会社の文化や個人の価値観によって様々であるからです。しかしながら、どの会社においても、どのような立場の人でも、良いプレゼン資料であると評価するポイントはあります。

それは次の2つです。

  • 構成(ストーリー)が分かりやすいこと
  • デザイン・レイアウトがシンプルであること

当たり前のことのようにも思いますが、意外とこのポイントを意識して資料を作成することができていないことが多いと思います。資料の説得力を増すためにとりあえず情報を盛り込んだり、見栄えを良くするために複雑なデザインにしたりと、資料が分かりにくくなってしまうことがあると思います。

私自身、せっかく調べた内容だから資料に入れたい、かっこいいスライドデザインにしたいという思いから、プレゼン資料が複雑で理解が難しいものになることが多くありました。しかし、プレゼン資料はあくまで「手段」であり、それ自体は「目的」ではありません。

読み手の意思決定・行動を実現するために、最も分かりやすい構成(ストーリー)で、最もシンプルなデザイン・レイアウトで資料を作成することが重要なのです。

分かりやすい構成(ストーリー)とは

プレゼン資料の構成のことをコンサルタントは「ストーリー」と言います。その名の通り、プレゼン資料において物語を作り上げます。良いストーリーとは、「結論を支える要素・根拠が論理的に整合し、かつ、正しい順序で並んでいること」です。

小説でも作中に様々なイベントや伏線があり、クライマックスに至ります。各イベントが関連し合いながら、物語が進んでいくことによって読者は、物語を理解し、結末に感動することができるのです。逆に各イベントがバラバラで、展開も意味のあるものでなければ、感動するどころか、理解することすら難しいでしょう。

例えば、「コーヒーを飲む」という日常の選択でもストーリーがあります。当たり前のことのように思えますが、「コーヒーを飲む」という行動を起こすまでには、次のような思考プロセスが考えられます。単純な思考プロセスではありますが、結論を支える要素・根拠が論理的に整合し、かつ、正しい順序で並んでいると思います。例えば、「カフェインには眠気覚ましの効果がある」という前提条件があるからこそ、カフェインを多く含む玉露やコーヒーが選択肢として登場します。この前提条件がそもそも間違っていたり、順番が後ろになっていたりすると「コーヒーを飲む」という結論を導くことは困難となります。

プレゼン資料における構成(ストーリー)

プレゼン資料において取り扱うテーマはビジネスの難解な問題であることが多いです。しかし、考え方としては、「結論を支える要素・根拠が論理的に整合し、かつ、正しい順序で並んでいること」が重要となります。

大きな流れとしては、「結論 ⇒ 現状分析 ⇒ 課題発見 ⇒ 解決策導出」の順でストーリーを展開すると分かりやすいです。

結論

結論とはまさに、そのプレゼン資料において、読み手に意思決定・行動してもらいたい内容です。結論を最初に示すことをコンクルージョン・ファースト(Conclusion First)と言いますが、日常のコミュニケーションの場面だけでなく、プレゼン資料にも妥当します。

プレゼンテーションを受ける側が最も知りたいことは、「結局何が言いたいのか」ということです。結論を先延ばしにし、ダラダラと情報を示していると、プレゼンテーションを遮られ、「結局何が言いたいの?」と聞かれてしまう可能性があります。

現状理解

結論を説明した後、まずは、今の状態、起こっていることから説明します。これには、まずプレゼンの受け手と目線合わせを行う意味があります。何が今起こっているか、ということについては受け手と概ね合意することができると思います。争いようがない観点からプレゼンを開始することで、プレゼンの受け手と目線合わせを行い、プレゼンの良いスタートを切ることができます。

現状理解では、今の状態、起こっていることを客観的に説明します。「売上が低下している」、「コストが高くなっている」、「離職率が高くなっている」、といった事実を端的に説明します。また、「売上を伸ばしたい」、「顧客満足度を上げたい」、「新しい事業を起こしたい」といった目標を提示する場合もあります。

問題定義

現状理解ではまず漠然とした事実を説明します。しかし、これだけでは真に取り組むべき問題は見えてきません。全ての問題に取り組もうにも、時間とリソースには限りがあります。問題の影響度・緊急性・難易度等を踏まえて、取り組むべき問題を絞り込みましょう

一般的には、影響度が大きく、緊急性が高く、難易度の高い問題に取り組むべきですが、個別の状況を踏まえて判断します。なぜ、その問題に取り組むべきか、定量的なデータ、客観的な事実、第三者による評価等を提示することによってプレゼンの受け手が納得できるようにします。

課題整理

取り組むべき問題が見えたら、次にその問題が発生している原因である「課題」を整理します。単純に「売上低下」という問題にも様々な原因が存在します。「商品の質が悪い」、「広告宣伝が弱い」、「接客が悪い」等、色々原因はあるかと思います。それらの原因を可能な限り、漏れなくダブりなく(MECE)整理しましょう。網羅的に課題を把握することによって、顕在化されていなかった課題を発見することができます。そしてプレゼンの受け手に対して、見落としている課題はないということをアピールすることができます。

課題特定

課題が整理できたら取り組むべき課題を特定します。問題を引き起こしている真の課題を特定します。問題の原因は様々考えることができますが、問題を解決するためには正確に原因を特定する必要があります。ここで間違った原因に焦点を当ててしまうと、問題の解決は達成できません。プレゼンにおいても最も重要な部分といっても過言ではありません。

課題特定を行う際には、客観的事実と論理的関係性が非常に重要になります。
例えば、「業務の生産性が低下している」という問題に対して、原因を明らかにしてみると下図のように考えることができます。問題から「なぜ?」を繰り返し、真の原因を特定します。「なぜ?」に対する回答は、具体的、定量的、客観的な情報を用いて示すことが重要となります。

プレゼンにおいては、この課題特定のパートが、受け手の最も関心が高く、質問が多く飛ぶことが予想されます。豊富な情報を集め、それらを論理的に組み合わせ資料を構成することを心がけましょう。

解決策の方向性

課題が正確に定義することができれば、いよいよ具体的な取り組みを検討する段階に入ります。最初に結論で示した内容を導き出します。

課題に対しては、具体的な解決策を考える前に方向性を提示します。まずは何をするか(WHAT)を明確にし、その後どのようにするか(HOW)を決めましょう。方向性が決まっていないと、具体的な取り組みのアイデア出しを行っても発散してしまいます。

解決策の方向性は、企業の戦略、計画といった方針やコスト・時間・規制といったボトルネック等の具体的な状況を踏まえ策定します。プレゼンの受けてが納得できるように理由付けを行うことが重要となります。

解決策のアイデア

次に具体的な解決策(HOW)の提示に移ります。解決策の方向性にしたがって、いくつかアイデアを提示します。1つでは却下される可能性もあるため、有効なアイデアを複数準備するのが良いかと思います。

アイデアは可能な限り具体的に示すことが重要です。5W1Hを意識し、そのアイデアを実行した際の具体的シーンをイメージし、その内容を資料に落とし込みましょう。具体性が欠けていると受け手にとっては不安を感じることになり、意思決定や行動を起こすことを躊躇することになります。

解決策の評価

最後に解決策の評価を提示します。解決策のアイデアだけではプレゼンの受け手は納得しないでしょう。きちんとそのアイデアにより課題が解決すること(効果)、そのアイデアが実行可能であること(実現可能性)を説明しなければいけません。効果と実現可能性も可能な限り、具体的、定量的、客観的に示す必要があります。また、その他必要に応じてコスト面等必要な軸を追加し評価します。

必ずしも評点が高いアイデアが採用されるわけではないですが、受け手が意思決定を行う際の重要な情報となるので、欠かさずプレゼン資料に盛り込みましょう。この解決策の評価の結果が冒頭で示した結論になるはずです。

基本的にはこの流れに従い、セクション間の整合性に注意しつつ、スライドを構成することによって、プレゼン資料のストーリーが分かりやすくなると思います。

繰り返しとなりますが、良いストーリーとは「結論を支える要素・根拠が論理的に整合し、かつ、正しい順序で並んでいること」です。ビジネス上の意思決定・行動を実現するためには、上記で示した7つの要素が正しく並んでいることが望ましいです。プレゼン資料を作成する際には、これらの要素がきちんと揃っているか、各要素が整合しているかを意識しつつ、作成すると良いと思います。

シンプルなデザイン・レイアウトとは

スライドの構成要素

まずは、基本的なスライドの構成要素について見ていきます。スライドは大きく、①タイトル、②メッセージ、③ボディ、④脚注、からなります。基本的には、この4つの要素は必ず記載しましょう。

①タイトル:スライドの内容を端的に表す題名を記載

②メッセージ:そのスライドで伝えたい内容を記載。1つのスライドで伝える内容は1つ(1スライド1メッセージ)

③ボディ:メッセージを根拠づけるデータ・ファクトを記載

④脚注:ボディの補足情報やデータ・ファクトの出所を記載

特に②のメッセージを書き忘れているスライドが多く見られるのですが、本来メッセージはスライドを作成に着手する前段階で決まっているはずなので、真っ先に書く必要があります。このメッセージこそ前述のストーリーを構成する幹となるので、ストーリーが決まった段階で言語化することを意識しましょう。

メッセージはボディを根拠として伝えたい内容を表現するものなので、メッセージとボディがきちんと整合していることを意識しましょう。

例:フードデリバリーサービスのビジネスモデル

図解のルール

次に③ボディを図解する際の図解の基本を紹介したいと思います。図解の基本はシンプルであることです。奇を衒ったデザインやレイアウトにするよりは、可能な限りシンプルであることを追及しましょう。シンプルなデザイン・レイアウトにするためのポイントを以下では紹介したいと思います。

視線の動きに従う

レイアウトは人の視線の動きに従うように設計しましょう。人の視線は自然と左上から右下にかけてZ字のように移動します。なので、プレゼン資料のレイアウトでもこの動きにしたがって、レイアウトを設計することを意識しましょう。

流れ・方向性を示す

スライド内で変化・遷移・手順といった流れを示す場合は、矢印や矢羽根など流れや方向性を示す図形を用いることを意識しましょう。文字だけでは伝わりづらい内容を図形を用いて視覚的に表現しましょう。

関連・構造を示す

ボディ内にいくつかの要素が存在する場合は、その関連や構造をきちんと視覚的に示すことを意識しましょう。図形の位置、並べ方を工夫することにより、文字を使って表現をしなくても、要素間の関係性を示すことはできます。

重複をなくす

複数の要素を並べる場合、各要素に共通の項目がある場合が有ります。そのような場合、同一の項目をグルーピングしたり、星取表で表現することで、可能な限り重複を排除することを意識しましょう。重複をなくすことによって、文字数が減りスッキリとしたスライドになり、見やすくなります。また、共通する項目を一目で識別することができ、読み手の理解を手助けします。

色は3色まで

スライドの色は原則として3色までとしましょう。綺麗なスライドにするためには、多くの色を用いて派手にしたいと考えるかもしれませんが、逆に色に注目を集めてしまい、本当に伝えたいメッセージが伝わらない可能性があります。なので、色は可能な限り少なくし、伝えたいポイントに効果的な色を用いましょう。

具体的には、コーポレートカラーなどスライドデザインの基本となる「基本色」、文字などに用いる「黒色」、強調したい点に用いる「強調色」の3色を用いて表現しましょう。そのスライドで最も伝えたい点には「強調色」を用いるなどメリハリをつけて表現することが重要です。

以上の点を意識することによって、スライドをシンプルで分かりやすくすることができます。派手さや複雑な表現は読み手の視線や思考を混乱させ、メッセージを正確に伝えることの障害となります。なので、スライドのデザインは徹底的にシンプルであることを心がけましょう。

まとめ

本記事では以下の2つのポイントに着目してプレゼン資料作成のコツやテクニックをまとめました。

  • 構成(ストーリー)が分かりやすいこと
  • デザイン・レイアウトがシンプルであること

いずれにおいても重要なのは、「自己満足な資料をつくらないこと」、言い換えれば、「読み手の立場に立つこと」だと思います。プレゼン資料は、綺麗でかっこいい資料をつくることが目的ではなく、読み手が意思決定・行動をすることが目的です。伝えたいメッセージを読み手が100%理解できるよう、読み手にとっての分かりやすさを追求し、プレゼン資料を作成することを心がけましょう。

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