SaaS(Software as a Service)には、Horizontal SaaSとVertical SaaSが存在します。一般的にSaaSと聞いてイメージしやすいのが、Horizontal SaaSで、例を挙げるとクラウド会計のマネーフォワードクラウドやfreee、名刺管理サービスのSanSan、Web会議サービスのZoomなどがあります。一方で、Vertical SaaSというとすぐに思いつく企業やサービスは少ないと思います。
Horizontal SaaSとは
Horizontal SaaSとは業界・業種に関係なく「マーケティング」や「人事・労務」など特定の職種・部門が使用するSaaSを指します。企業には、「特定の業界・業種に特有の機能」と「全ての企業に共通した機能」があり、Horizontal SaaSは後者の機能をカバーします。
「全ての企業に共通した機能」には、「マーケティング」、「人事・労務」、「財務・会計・経理」、「法務・契約管理」、「経営企画」、「情報システム」、「リサーチ」等があります。(勿論、一部機能を持っていない企業もあるかと思いますが、ここでは一般的に保有する機能を挙げています。)
どのような企業でも人を雇用し事業を運営しているのであれば、採用し、労働条件を定め、給与を支払うといった「人事・労務」の機能は必要不可欠です。また、売上を上げたらそれを記録し、そのためどのくらいコストを要したのか把握する「財務・会計・経理」の機能も必要となるでしょう。
Horizontal SaaSでは、上記のような業界・業種に関係なくどのような企業においても求められる機能を提供します。
Horizontal SaaSの例
マーケティング:Salesforce marketing Cloud、Oracle、Knowledge Suite、SanSan
人事・労務:Smart HR、カオナビ、
財務・会計・経理:マネーフォワードクラウド、freee、楽々精算
法務・契約管理:クラウドサイン、AI-CON、Hubble
情報システム:Office365、サイボウズ、ラクモ
リサーチ:SPEEDA、User Insight
Vertical SaaSとは
Horizontal SaaSに対してVertical SaaSは、特定の業界・業種において使用するSaaSを指します。前述の通り、企業には「特定の業界・業種に特有の機能」と「全ての企業に共通した機能」があり、Vertical SaaSは前者の機能をカバーします。
企業には様々な業界・業種があり、それぞれの業務内容は大きく異なります。例えば、メーカーでは、商品を販売するため、商品の企画・設計・開発・製造等を行います。一方で、医療業界では一般的にそのような業務を行うことはありません。このような業界・業種に固有の業務をサポートするために提供されるSaaSがVertical SaaSです。
Vertical SaaSは業界・業種に特化しているため、Horizontal SaaSと比べて汎用性は劣ります。一方で、特定の業界・業種に向けて設計・開発が行われているため、スムーズに導入ができ、他のSaaSとの差別化もしやすいのが特徴です。
Vertical SaaSの例
製造業:aperza、AIA、INNOVIA、KAMINASHI
医療:CLINICS、KAKEHASHI、Allm、DENTA LIGHT、Ubie、CLIPLA
介護:カイポケ、kuraseru
小売:ABEJA Insight for Retail、FULL KAITEN、
流通:ロジザード
サービス:スマレジ、AirREGI、ユビレジ
飲食:TableCheck、TORETA
教育:スタディプラス、アタマプラス、CoDOMON
建設:Octinic
不動産:Housmart、SORA、Open Room、Non Broker
ホテル:SQUEEZE
保険:hokan
まとめ
以上が、Horizontal SaaSとVertical SaaSの意味と違いでした。国内においては、Horizontal SaaSは浸透しているが、Vertical SaaSはまだまだ黎明期にあります。Horizontal SaaS市場ではコモデティ化し、トッププレイヤーが大きなシェアを占め参入の余地が少なくなっていますが、Vertical SaaSでは、まだまだ様々な業界・業種での参入可能性は大きいといえます。国内においても有望なVertical SaaSが登場し、上場を果たす企業も登場しています。今後は、バリエーションに富んだVertical SaaSが登場することが期待できます。
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