【デジタルガバメント】マイナンバーカード普及の地域格差 -普及率の高い地域の取り組み

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サマリ

  • マイナンバーカードの交付率は30%に到達した
  • 一方で、地域間では交付率に大きな差がある
  • 人口が少ない地域や地域振興券といった金銭的な誘因のある地域では交付率が伸びている
  • 加賀市においては、便利な行政サービスを届けるという方針が明確であり、多くの自治体が学ぶべき点が多い

マイナンバーカードの交付率

総務省の資料によれば、2021年5月1日時点でのマイナンバーカード交付率が30%に到達しました。2020年5月1日時点での交付率16.4%から13.7ポイント増加しています。

マイナンバーカードの交付率は総務省HPを参照。

総務省|マイナンバー制度とマイナンバーカード

交付率の推移を見ると、2020年以降比較的堅調に増加していることが分かります。これは新型コロナウイルスによる影響が大きいでしょう。国民1人に10万円を交付する特別定額給付金で、マイナンバーカードを用いてオンライン申請ができることに注目が集まりました。また、対面接触を避けるため、マイナンバーカードを用いたオンラインでの確定申告が推奨されました。加えて、マイナポイント事業により普及が加速したと考えられます。

しかし、このペースでは2022年度末に、ほぼすべての国民がマイナンバーカードを取得するという政府目標の達成は困難といえます。

マイナンバーカード交付率の地域差

注目すべき点は、地域によりマイナンバーカードの交付率に差があるということです。下図はマイナンバーカードの交付率を視覚的に表現したものです。色の濃い部分が普及率の高い地域です。これを見ると、都道府県ごとの差があることだけでなく、都道府県の中でも特に交付率の高い地域があることが確認できます。

出所:日本経済新聞「ふるさとクリック 地図で見るマイナカード普及率」
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/regional-regeneration/mynacard-grant-rate-map/

まずは、都道府県の交付率の差について概観します。

下表はマイナンバーカード交付率の上位5都道府県、下位5都道府県を表しています。最も交付率が高い宮崎県39.9%と最も交付率が低い新潟県23.4%では16.5ポイントもの差があります。

マイナンバーカード交付率上位5都道府県(2021年5月1日時点)

順位都道府県名人口【R2.1.1時点】交付枚数【R3.5.1時点】人口に対する交付枚数率
1宮崎県1,095,903437,39039.9%
2奈良県1,353,837471,82534.9%
3兵庫県5,549,5681,905,56434.3%
4滋賀県1,420,948480,37133.8%
5東京都13,834,9254,638,37533.5%

マイナンバーカード交付率下位5都道府県(2021年5月1日時点)

順位都道府県名人口【R2.1.1時点】交付枚数【R3.5.1時点】人口に対する交付枚数率
1新潟県2,236,042523,57623.4%
2高知県709,230168,29423.7%
3沖縄県1,481,547354,53623.9%
4群馬県1,969,439476,05024.2%
5長野県2,087,307519,30724.9%

次に、市区町村レベルでの交付率について概観します。

下表はマイナンバーカード交付率の上位5都道府県、下位5都道府県を表しています。最も交付率が高い岩船郡粟島浦村75.3%と最も交付率が低い国頭郡今帰仁村12.2%では63.1ポイントもの差があります。

マイナンバーカード交付率上位10市区町村(2021年5月1日時点)

順位都道府県名市区町村名人口【R2.1.1時点】交付枚数【R3.5.1時点】人口に対する交付枚数率
1新潟県岩船郡粟島浦村34025675.3%
2石川県加賀市66,35043,21665.1%
3大分県東国東郡姫島村1,9911,20360.4%
4静岡県賀茂郡西伊豆町7,7414,58959.3%
5長野県南佐久郡南牧村3,1131,83859.0%
6高知県宿毛市20,21111,67957.8%
7宮崎県都城市164,50693,06556.6%
8茨城県猿島郡五霞町8,5124,54253.4%
9鹿児島県熊毛郡中種子町7,9243,97750.2%
10岐阜県大野郡白川村1,60880550.1%

マイナンバーカード交付率下位10市区町村(2021年5月1日時点)

順位都道府県名市区町村名人口【R2.1.1時点】交付枚数【R3.5.1時点】人口に対する交付枚数率
1沖縄県国頭郡今帰仁村9,3601,14512.2%
2沖縄県宮古郡多良間村1,12213812.3%
3北海道爾志郡乙部町3,62551314.2%
4高知県高岡郡四万十町16,8092,41914.4%
5長野県上高井郡高山村7,0141,01314.4%
6高知県高岡郡越知町5,53980714.6%
7北海道紋別郡西興部村1,06715814.8%
8青森県北津軽郡中泊町10,8911,64915.1%
9北海道中川郡本別町6,8991,04915.2%
10長野県下水内郡栄村1,79827515.3%

このように全国のマイナンバーカード交付率は30%であるといっても、地域間で大きな差があるということが分かります。

過去1年間で交付率が大きく上昇した地域

とはいえ、やはり人口が少ない地域の方が普及が早いという側面もあると思いますので、過去1年で交付率が大きく上昇した地域を確認します。高知県の宿毛市においては伸び率514.9%と1年間で交付率が大きく上昇しています。また、人口が最も多い石川県加賀市においても伸び率375%と大きく上昇していることが分かります。

過去1年間でのマイナンバーカード交付率の伸び率の大きい市区町村

順位都道府県名市区町村名人口【R2.1.1時点】人口に対する交付枚数率(R2.5.1時点)人口に対する交付枚数率(R3.5.1時点)伸び率
1高知県宿毛市20,2119.4%57.8%514.9%
2高知県四万十市33,6809.3%46.3%397.8%
3岐阜県大野郡白川村1,60810.4%50.1%381.7%
4石川県加賀市66,35013.7%65.1%375.2%
5福島県伊達郡桑折町11,73310.0%42.7%327.0%
6徳島県海部郡海陽町9,2379.2%38.7%320.7%
7奈良県宇陀郡曽爾村1,42711.0%46.0%318.2%
8北海道松前郡福島町3,9689.3%37.1%298.9%
9岐阜県安八郡輪之内町9,6649.3%32.3%247.3%
10福島県石川郡平田村6,0369.5%32.6%243.2%

これらの地域は、どのようにして交付率を増加させることができたのか、以降順に見ていきたいと思います。

高知県宿毛(すくも)市

宿毛市では、マイナンバーカードの申請者、保有者に対して、1万円分(500円券20枚)の地域振興券を配布しました。マイナポイントの上限が5,000ポイントであるところ、倍の1万円分の地域振興券は、マイナンバーカードを保有する大きな誘因となったようです。また、マイナポイントとは異なり、地域振興券により地場の企業・商店での購買が進み、結果的に地域経済に還元されることになります。

お探しのページは見つかりません。 - 宿毛市

高知県四万十(しまんと)市

四万十市でも宿毛市同様に、マイナンバーカードの申請者、保有者に対して、5,000円分(500円券10枚)の地域振興券を配布しています。四万十市では、本事業に1億2,900万円の予算を計上し、本腰を入れ取り組んでいることがわかります。

高知県では、特定の市区町村ではマイナンバーカード普及に向けた積極的な取組が行われているようです。一方で、県全体でみると最下位から2番目の順位であり、県が主導して普及を促進する取組はまだ不十分であるように思えます。

岐阜県大野郡白川村

大野郡白川村では、特徴的な取組は確認できませんでした。

石川県加賀市

加賀市では面白い取り組みが多くあります。

①かが応援商品券の配布

加賀市では、下記を対象に5,000円分(1,000円×5枚)のかが応援商品券を配布しています。

・令和3年2月1日(月曜日)~8月31日(火曜日)にマイナンバーカードを申請した人

・令和3年2月1日(月曜日)~8月31日(火曜日)に加賀市に転入し、令和3年9月15日(水曜日)までにマイナンバーカードの継続利用手続きを済ました人

マイナンバーカードつくるなら、今|加賀市
令和2年6月から令和3年1月にかけて、マイナンバーカードを新たに申請した人と保有している人に、市内の小売店、飲食店、旅館等で使える(1人につき)5,000円分のかが応援商品券を配布しました。現在、加賀市のマイナンバーカードの交付率は全国の市区1位の60.0%(令和3年3 月1 日現在:総務省...

②行政手続のオンライン化

加賀市では、スマートフォンだけで手続きが完結できるオンライン行政手続きサービスを推進してきました。

xIDが開発した行政向けID技術「xID」を活用し、スマホにマイナンバーカードをかざしてマイナンバーの情報を読み取らせるだけで、本人認証を可能としました。

出所:xID

また、xIDをトラストバンクの行政申請フォーム作成ツール「LoGoフォーム」と連携させ、申請フォーム上で氏名や住所を自動入力できるようにし、迅速なオンライン行政手続を可能としました。

出所:トラストバンク

加賀市は昨年の8月に、2021年3月末までに「市民のニーズが高い50~60の手続きを順次オンライン化する」との計画を示していました。このように、マイナンバーカードを保有することで行政サービスの利便性が向上するメリットに訴求し、交付率を向上させたことが考えられます。なお、2021年6月現在、132件の行政手続で電子申請が利用できるようです。

LoGoフォーム

③e-Residencyの提供

加賀市は今年の5月14日に、日本初のe-Residency(電子市民)プログラムとなる「e-加賀市民制度(加賀版e-Residency)」を発表しました。

「e-Residency」とは、電子居住権制度を意味し、物理的にその土地に居住をしていなくても、オンラインでその地の仮想住人になれる仕組みです。世界ではエストニアがこのe-Residencyの制度を実施していることで有名です。この制度により、エストニアは人口100万人の国でありながら、2025年には1,000万人の電子市民を集まることを計画しています。
https://e-resident.gov.ee/become-an-e-resident/

加賀市においても、加賀市に居住しない人が加賀市の電子市民となることができます。e-加賀市民については、加賀市における様々なサービスを利用できる予定です。

  • ⾏政サービス(MaaS、施設利⽤、教育、保育、空き家マッチング等)
  • 法人登記代行サービス
  • MaaSサービス
  • ドローンによる物流サービス
  • 病院と“つながる”アプリ
  • 遠隔医療相談サービス
  • 診療状況の⾒える化
  • 電⼦投票
https://www.city.kaga.ishikawa.jp/material/files/group/101/kaga_supercityteian_gaiyou.pdf

出所:加賀市プレスリリース
https://www.city.kaga.ishikawa.jp/material/files/group/101/01.pdf

これらのe-Residency制度を運用するためには、マイナンバーカードを活用したデジタルサービスを確立しておく必要があります。このような、先進的な取組みを実現するためにもマイナンバーカード交付を積極的に推進してきたことがうかがえます。

④高齢者向けスマホ教室受講の助成

加賀市は、65歳以上の高齢者が新たにマイナンバーカード対応のスマートフォンを購入する際、市のスマホ教室受講を条件に一律5千円を助成する制度を実施しています。高齢者のマイナンバーカード取得を促し、より多くの市民がデジタル行政サービスを利用することが期待できます。

出所:加賀市HP

スマホ購入、高齢者に5千円 65歳以上、教室受講が条件 加賀市が新年度|政治・行政|石川のニュース|北國新聞
加賀市は新年度、65歳以上の高齢者が新たにスマートフォンを購…

上記のように加賀市では、マイナンバーカード取得だけではなく、その先のデジタル行政サービスの普及に向けた積極的な取り組みが行われています。加賀市は自治体の電子化の1つのロールモデルになると思われます。

福島県伊達郡桑折(こおり)町

桑折町桑折町においては、マイナンバーカード取得者に対して3,000円(500円券×6枚)のこおり応援商品券を配布しています。発行総額は1740万円(5,800人分:町民人口の約50%分)です。
https://www.town.koori.fukushima.jp/anti_covid19/life_tax_covid19/life/9220.html

徳島県海部郡海陽町

海陽町では、「徳島県海陽町版プレミアムポイント事業」として、最大1万円分のポイントをもらえるキャンペーンを実施しておりました(マイナポイント最大5,000円分+徳島県版プレミアムポイント最大3,000円分+海陽町版プレミアムポイント最大2,000円分)。

奈良県宇陀郡曽爾(そに)村

宇陀郡曽爾村では、特徴的な取組は確認できませんでした。

北海道松前郡福島町

松前郡福島町では、特徴的な取組は確認できませんでした。

岐阜県安八郡輪之内町

安八郡輪之内町では、特徴的な取組は確認できませんでした。

福島県石川郡平田村

石川郡平田村では、特徴的な取組は確認できませんでした。

得られた気づき

①人口の少ない市区町村では交付率は伸びやすい

過去1年間のマイナンバーカード交付率の上位20位を見てみるといずれも人口が比較的小さい地域が多いです。全国の市区平均人口は約12万人、町村平均は1.1万人なので、市区レベルでは平均を上回っている地域はなく、町村レベルではいくつか上回っている地域があるといった程度でしょうか(市区町村全体の平均は約7.3万人)。このような小規模な地域では、自治体と住民の連携が取りやすく、マイナンバーカード取得の喚起も効果が大きいのでしょうか。

順位都道府県名市区町村名人口【R2.1.1時点】人口に対する交付枚数率(R2.5.1時点)人口に対する交付枚数率(R3.5.1時点)伸び率
1高知県宿毛市20,2119.4%57.8%514.9%
2高知県四万十市33,6809.3%46.3%397.8%
3岐阜県大野郡白川村1,60810.4%50.1%381.7%
4石川県加賀市66,35013.7%65.1%375.2%
5福島県伊達郡桑折町11,73310.0%42.7%327.0%
6徳島県海部郡海陽町9,2379.2%38.7%320.7%
7奈良県宇陀郡曽爾村1,42711.0%46.0%318.2%
8北海道松前郡福島町3,9689.3%37.1%298.9%
9岐阜県安八郡輪之内町9,6649.3%32.3%247.3%
10福島県石川郡平田村6,0369.5%32.6%243.2%
11熊本県天草郡苓北町7,12943.90%13.40%228%
12長崎県東彼杵郡波佐見町14,63539.90%12.20%227%
13高知県幡多郡三原村1,49824.80%7.60%226%
14徳島県板野郡上板町11,95725.80%8.20%215%
15愛媛県大洲市42,70639.20%12.50%214%
16佐賀県杵島郡江北町9,74133.90%10.90%211%
17香川県綾歌郡綾川町24,07235.90%11.60%210%
18三重県多気郡明和町23,13928.80%9.40%206%
19北海道上川郡比布町3,67627.00%8.90%204%
20徳島県那賀郡那賀町8,17627.00%8.90%203%

②地域振興券などの金銭的な誘因は交付率向上には効果的

過去1年間で交付率が大きく上昇した地域の上位10の内5つの市区町村で、形態は違えど地域振興券などの金銭的なリターンが得られる制度を実施していました。お金を餌にするというのは非常に単純ですが、効果があるようです。また、地域振興券などは地域でのみ利用に限られるため、地域経済の活性化にもつながるので、良い取組みかと思われます。一方で、金銭的な誘因により向上するのは、マイナンバーカードの交付率だけです。考えるべきは、マイナンバーカードを普及させ、実現したい内容です。

③マイナンバーカード普及後を考えていない

上述の通り、マイナンバーカードの交付率だけ増加させても意味はありません。自治体だけでなく政府も、マイナンバーカードを交付するという手段を目的として捉えているように思えます。上記に挙げた地域においては、マイナンバーカードを取得してもほとんど利用しないという人が多いように思えます。考えるべきは、マイナンバーカードをどのように活用し、住民はどのように嬉しくなるのかという点だと思います。上記で確認した地域で、その点を明確に打ち出している地域は加賀市以外にはありませんでした。

加賀市においては、「より便利な行政サービスや官民連携サービスをより多くの人に届ける。そのための手段としてマイナンバーカードを普及させる。」という方針が明確でした。そして民間ベンチャー企業と手を組み、実現に向けた動き出しも非常に早いと思います。

金銭的な誘因により、マイナンバーカードを普及させるのも1つの手段として適切ではあると思いますが、やはり考えるべきはマイナンバーカードが普及した後の未来です。そういった点で多くの自治体は加賀市に学ぶことが多いように感じます。

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