新型コロナウイルス感染拡大を受けて、厚生労働省は2020年4月13日から特例として初診時のオンライン診療を許容し、オンライン診療に対応する医療機関リストを公開しました。
出所:厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html)
上記の厚生労働省のリストは検索しづらいのですが、ジャックジャパンがわかりやすくマップ化したものを公開しております。
出所:https://jagjapan.maps.arcgis.com/apps/webappviewer/index.html?id=0acb412ae1f8467da2605b7aff803679
病院等の医療機関に赴くことなく受診することができ、院内感染リスクの低減や遠隔で症状を抱える患者の不安を取り除く効果が期待されています。一方で、オンライン診を可能とする環境が整っていない、診療に対する責任等の普及に対する課題も多くあります。
しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大防止という観点ばかりでなく、今後進展する少子高齢化に伴う医療ニーズに対応するためにもオンライン診療の普及は必須だと思います。
本稿ではオンライン診療の概要や普及に向けた課題とその解決に取り組む企業をご紹介したいと思います。
オンライン診療とは?
厚生労働省はオンライン診療を「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」と定義しています。遠隔医療の一部としてオンライン診療があるイメージです。
出所:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
(https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf)
オンライン診療とは、パソコンやスマートフォンのビデオ通話機能を活用し、医師が患者に対して診療を実施することです。加えて、薬剤の処方、服薬指導についても患者が医療機関や薬局に訪れることなく実施される場合もあります。
オンライン診療のメリットは?
オンライン診療のメリットには、患者側のメリットと医師側のメリットがあります。
◇患者のメリット
- 院内感染・二次感染を防ぐことができる
- 通院にかかる時間・手間を軽減できる
- 受診する時間・場所を調整しやすい
- 処方薬を取りに行く時間・手間を軽減できる
特に新型コロナウイルスの影響により、「院内感染・二次感染を防ぐことができる」という点が特に重要視されています。総合医療情報サイト「ドクターズ・ファイル」の調査によれば、医療機関を受診する際に事前に知りたい情報として最も多いのが、「院内の感染予防策について」であり、医療機関の受診に際して院内感染を防ぐことが重大な関心事になっています。
出所:ドクターズ・ファイル
◇医師(医療機関)のメリット
- 患者とのコミュニケーション回数の増加
- 通院・治療の継続率の工場
- 遠方の患者に対する診療
また、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、多数の医師が、患者がオンライン診療を利用することの必要性を感じております。
出所:エムステージ
オンライン診療普及の課題は?
一方でオンライン診療の導入・利用は現状あまり進んでおらず、今後の利用予定はないとしている医療機関も多いです。多くのメリットがあるオンライン診療ですが、実際に導入・利用するにはクリアすべき課題が多数あります。
その最も大きな課題として「環境整備」が挙げられます。
出所:メディカル・データ・ビジョン
オンライン診療のシステムの導入、電子カルテの整備、決済方法等、オンライン診療の導入には多様な検討事項が必要であり、コストもかかります。そのため、簡単に低コストで導入することができ、かつ、医師・患者にとって利用しやすいシステムが求められています。
オンライン診療普及に取り組む企業やソリューションは?
下記のように医療機関へのオンライン診療のシステムを提供する企業が存在します。
出所:各種公開情報より作成
いずれの企業も診察の予約・問診・受診をワンストップで提供するという点ではあまり差がないように思います。一方で、次のような観点での差別化が行われている(今後、行われる)と考えます。
医療機関への導入・維持の負担減
費用対効果の観点でオンライン診療の導入をためらっている医療機関も存在するため、いかに医療機関の負担を減らすかということが重要になってきます。そのため、「curon」のような医療機関側の負担の少ないサービスが選ばれるのではないかと考えます。
医師・患者にとって利用しやすいUI/UX
オンライン診療のシステムは、医療機関にかかる機会の多い高齢者にとってそれぞれの機能が利用しやすいものでなければなりません。患者がシステムの利用に、困ったり、迷ったりすることのないようにいかに単純な操作性、わかりやすい画面をつくるかが重要になってくると考えます。
電子カルテ等他のシステムとのシームレスな連携
オンライン診療では、患者と対面しないため、患者の健康状態・病状を完璧に把握することは難しいです。そのため、他の健康状態を示すためのデータをうまく活用することによって、健康状態・病状の正確な把握が必要です。電子カルテといった過去の患者のデータやウェアラブル端末のデータを管理するシステムとシームレスに連携し、データを活用することが求められると思います。
今後、オンライン診療のニーズは医療機関・患者の双方から高まると思います。一方で、導入の負担やオンラインでの診療への不安といった点がボトルネックとなります。国は診療報酬・制度の見直し等医療機関がオンライン診療を導入しやすい環境の整備、企業は医療機関・患者にとって利用しやすいソリューションの開発、医療機関・患者はオンライン診療への順応というように各プレイヤーが一体となって対応を進めていく必要があると考えます。
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