本記事では、コンサルタントが思考力を鍛えるために読んでいる書籍をご紹介します。
コンサルタントはクライアントの課題を解決するために、複雑な問題を分析し、最適な解決策を提案する必要があります。そのため、正しく考える”思考力”が求められます。ビジネスの世界には正解はありませんが、betterな解を導くためには問題を正しく捉えて、解決策を根拠に基づき説明できなければいけません。解決策それ自体も大事ですが、どのようにそれを考えたか思考のプロセスも重要です。思考のプロセスが明確でなければ、他人から見てそれが正しいかどうか判断できないからです。
本記事でご紹介する書籍は、私が実際に読んで、その思考法を実践するために役立った書籍です。やはり思考法というのは実践しなければ身につきませんが、まずは一般的に認められている概念を理解することが重要です。
以下では、テーマ別に思考力に関する書籍を紹介します。特に基本となる思考が、論理的思考、論点思考、仮説思考です。システム思考やデザイン思考は、対面するケースに応じて用いていきます。
- 論理的思考:事実や証拠に基づいて問題を分析し、合理的な結論を導く能力
- 論点思考:与えられた問題や状況に対して、「解くべき問題」論点を設定する能力
- 仮説思考:論点に対して仮の答えを設定する能力
- システム思考:複雑なシステムやプロセスを理解し、相互に影響しあう要素を考慮に入れて問題を解決する能力
- デザイン思考:ユーザー中心のアプローチで問題を解決する能力
論理的思考力
ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル
本書は、相手を納得させるコミュニケーションをとるためのスキルであるロジカル・シンキングを学ぶことができます。コンサルに限らず、すべての社会人が身につけたいスキルです。
本書では、以下のようなロジカル・シンキングにおける重要なツールを紹介しています。
- MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive):情報を重複なく、漏れなく整理すること
- Mutually Exclusive(相互排他的):カテゴリや要素が重複しないように分類されていること
- Collectively Exhaustive (網羅的):カテゴリや要素が漏れなく全てをカバーしていること
- So What? / Why So?:結論と根拠の関係性を示すために答えなければいけない質問
- So What?:「結局何が言いたいのか」という結論を問う質問
- Why So?:「なぜそれが言えるのか」という根拠を問う質問
ロジカル・シンキングは、「考える・読む・書く・話す」といったあらゆる場面において有用なスキルです。逆にこのスキルが備わっていなければ、相手と上手くコミュニケーションが取れなかったり、自分の主張を相手に納得させられなかったりと、仕事を進める上で不利になってしまいます。
論理的思考力は、あらゆる思考法の基礎中の基礎となるものなので、最初に読むことをおすすめします。
論点思考
論点思考 BCG流問題設定の技術
本書では、問いを立てる力である論点思考を学ぶことができます。
論点とは「解くべき問題」のことで、課題やイシューといった言葉も近い意味で用いられます。コンサルタントは日々「論点」という言葉を「このプロジェクトの論点は何か」「解決に向けた論点は何か」というように日常的に用いています。この「解くべき問題」を定義するプロセスを論点思考と呼びます。
論点思考は問題解決における最初のステップであり、最初に論点設定を間違えてしまうと、間違った問題に取り組んでしまい、効果的な解決策を導くこともできません。ビジネスの世界では時間やリソースというものは有限であるため、何でもかんでも取り組むというわけにはいきません。そのため、コンサルタントは最も効果的かつ効率的に問題を解決するため、「解くべき問題」を定義するのです。
本書では、論点の定義、論点を導くプロセス・手法を実例を用いて紹介しており、論点思考の概念を分かりやすく学ぶことができます。とはいえ、論点思考は実践することが大事です。本書を読んだ上で、自身のプロジェクトや仕事において、取り組む前に論点を立て、議論することを意識づけることをおすすめします。
イシューからはじめよ──知的生産の「シンプルな本質」
人は問題・課題に直面した時、どうしても答えや解決策を導くことに急ぎがちです。しかし、世の中の問題や課題は簡単に答えを出せるほど単純なものではありません。特にビジネスの世界では問題・課題はさらに複雑で、解決のための時間やお金・情報といった制約が存在します。
そのため、我々コンサルタントは問題・課題をシンプルにし、真に解決すべきイシューを明らかにする必要があるのです。また、イシューはすべて解決すべきではなく、良いイシュー(本書では「本質的な選択肢である」「深い仮説がある」「答えを出せる」イシュー)を解決する必要があります。
本書では、イシューの見極め方、分析方法、解決方法、表現方法がコンサルタントの視点でまとめられております。新人コンサルタントの方やこれからコンサルタントを目指そうとする方には、是非手に取って読んでいただきたい一冊です。
仮説思考
仮説思考 BCG流問題発見・解決の発想法
論点思考に対応する考え方が仮説思考です。
コンサルタントとなると上長から「あなたの仮説は何か」ということを日常的に問われます。仮説とは、論点に対する「まだ証明はしていないが、最も答えに近いと思われる答え」である。
私たちが日常で直面する問題は、「過去に行くにはどうすればよいか」という無理難解な問題ではなく、ある程度の知識によって答えを出すことができます。コンサルタントはまず、論点に対する仮説を知識や経験から導き出し、その仮説を証明するために必要なファクト・データを収集します。仮説が明確であれば証明に必要なファクトやデータが限定されるので、問題解決のスピードが格段に向上します。逆に、仮説を立てずに問題解決を行おうとすると調査・分析すべきデータ・ファクトは無限に広がり、スピーディーな問題解決は実現しません。
本書では、仮説の定義、その必要性、立て方、検証方法が詳しく説明されています。コンサルタントの必読書といっても良いくらい重要な考え方がまとめられていますので、是非手に取ってみてください。
システム思考
システム思考がモノ・コトづくりを変える デジタルトランスフォーメーションを成功に導く思考法
「システム思考がモノ・コトづくりを変える デジタルトランスフォーメーションを成功に導く思考法」は、稗方和夫さんと高橋裕さんによって執筆された本です¹²³.
この本は、ビジネスパーソンに向けて、デジタルトランスフォーメーション (DX) を推進し実現するために有効な思考法である「システム思考」をわかりやすく説明しています。システム思考は、戦略を司る経営層やモノづくり・コトづくりを支える現場のリーダー層に読んでいただきたい1冊です。
以下は、本書の主要な内容です:
- 新たなモノづくり/コトづくりに必要なもの ─AI + IoT のその先へ─: DXを実現するために必要な要素について解説しています。
- 良い「創発」を生み出す ─システム思考と工学的アプローチ─: システム思考と工学的アプローチを組み合わせて、創発的なアイデアを生み出す方法について詳しく説明しています。
- システムをより深く理解する ─機能分解と設計項目のモデル化 ─: システムの構造を理解し、設計項目をモデル化する手法について解説しています。
- システムへの理解を「創発」につなげる ─コア技術と効果的・創造的な解決策 ─: システム思考を活用して、コア技術と解決策を結びつける方法について説明しています。
- 想定外を想定し、最適解を得る ─システムの動的・定量的な分析 ─: システムの動的な側面を考慮して、最適解を導く方法について詳しく解説しています。
この本は、DXを成功に導くための実践的なアプローチを提供しており、ビジネスの変革と改善に役立つでしょう³
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