企業の決算書というのは難しく、とっつきにくいイメージがありますが、それは決算書の数字だけを見ているからです。本書では、決算書をビジネスモデルと読み解くことで、その会社への理解を深めることができます。
本書の概要
本書では、貸借対照表(B/L)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(CF計算書)の構造を理解しながら、ビジネスモデルと結びつけて決算書を読む方法を紹介しています。その上で、以下のような様々な企業の事例を取り上げ、決算書を読み解く力を身につけていく構成になっています。
- ドラッグストアや100円ショップの決算書
- グローバル経営を推し進める会社の決算書
- 経営改革を実施した企業の決算書
- 倒産企業や粉飾決算を行った会社の決算書
様々な企業の決算書を比較しながら読み進めることで、有名企業がどのような仕組みで儲けているのかを理解することができます。また、他の企業の決算書を自力で読み解く力を身につけることができます。
本書を通じで学べる事
B/S、P/L、CF計算書の読み方
本書では、企業の基本財務諸表である貸借対照表(B/L)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(CF計算書)の読み方を学ぶことができます。会計に関する書籍では理論的な解説が多く分かりにくいのですが、本書ではマクドナルドの例や、飲料メーカー3社の比較、住宅メーカー2社の比較など実際の企業を題材としており、非常に分かりやすく整理がされています。
その上で、ビジネスモデルの違いが決算書にどのように反映されているのかを理解することができます。たとえば、飲料メーカーを例にしたビジネスモデルとB/Sへの影響は以下のように整理されています。
企業名 | 伊藤園 | サントリー食品 | コカ・コーラBJHD |
---|---|---|---|
ビジネスモデル | ファブレス経営を推進 | M&Aによるグローバル展開 | 自販機の売上比率が高い |
影響 | 製造を外部に委託しているため、必要な設備投資が少ない | 海外企業を買収し、のれんや商標権が計上されている | ボトリングを行う設備、自販機を多く保有している |
B/Sへの影響 | 有形固定資産が少ない | 無形固定資産が多い | 有形固定資産が多い |
一見わかりづらい決算書もそのメカニズムが明らかになることによって、興味深く読むことができます。
有名企業の儲けの仕組み
また、同じような業態の企業でも売上高営業利益率が大きく異なるのには明確な理由があるということを理解できます。たとえば、本書では、日鉄ソリューションズとオービックを比較し、オービックの営業利益率が高い要因として、製品のカスタマイズを極力排除し、変動費を減らしているという理由があげられています。
決算書の違いに着目することによって、どのような企業が儲けているかが明らかになると同時に、儲けの仕組みを明らかにするヒントを得ることができます。ただし、自ら儲けの仕組みを明らかにするには、ある程度の知識や情報も必要になると思われます。決算書だけを読み解くのではなく、その会社の経営方針、商品・サービスなどについても理解を深めていく必要があります。
CF計算書から危ない企業を見極める
さらに本書では、倒産企業や粉飾決算企業の決算書に基づき、「危ない決算書」の読み解き方を学ぶことができます。P/Lでは黒字決算になっていても、支払に必要な現金がなくなってしまっては企業は倒産してしまいます。このように業績が良好でも倒産してしまう会社はあり、その兆候はCF計算書を読み解くことによって明らかになります。
また、仮に粉飾決算によりP/Lが偽装されていたとしても、CF計算書は会計上の受けにくく、会社の状況を正確に表します。決算書というと単純でわかりやすいP/Lに注目しがちですが、会社の実態や危ない企業を見極めるためには、B/SやCF計算書も活用していく必要性がわかります。
まとめ
決算書だけを読むと退屈ですが、企業のビジネスモデルと結び付けて読み解くことによって、儲けの仕組みがわかり、興味を持って読むことができます。企業の決算書を正確に理解することは、社会人としてのビジネススキルを高めると同時に、自身のかかわるビジネスを改善するヒントにもなります。
決算書を読むのが苦手な方、自身のビジネスを改善したいと考えている方は、是非本書を手に取ってみてください。
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