コンサルタントがシステムプロジェクトにアサインされる前に読むべき本

本記事では、システム関連プロジェクトにアサインされる前にコンサルタントが読むべき本をご紹介します。

総合系コンサルティングファームやITコンサルティングファームに所属すると、ほとんどの人がシステムに関連したプロジェクトにアサインされると思います。要件定義、設計、開発、保守・運用、どのフェーズにアサインされるとしてもシステム開発に関する一連のプロセスを学習することが重要です。クライアント企業にベンダーとの交渉を一任されることも多く、最低限の知識を身に着けていなければ、不利な条件を強いられたり、プロジェクトの遅延を発生させたりする可能性もあります。

以下で紹介するのは、私がシステムプロジェクトにアサインされた際に実際に読んで、現場で使える知識やスキルが身に着いた書籍です。基礎編と個別テーマに分かれており、基礎編は今すぐにでも読んでいただきたいシステム開発における基礎知識が身に着く書籍です。個別テーマについては、案件の特性に応じて読んでいただければと思います。

目次

基礎編

図解でわかるソフトウェア開発のすべて

本書は、ソフトウェア開発について技術的な側面を中心に解説された図解入門書です。少々古い書籍ですが、平易な表現と豊富な図解を用いてソフトウェア開発の基礎知識が解説されており、全くの初学者でも非常に理解しやすいです。

以下の8章で構成されており、ソフトウェア開発における一連のプロセスを学習することができます。

  1. ソフトウェアエンジニアリングとは何か
  2. ソフトウェアはどのように作られるのか
  3. まずは開発計画から
  4. 構造化手法による分析・設計・プログラミング
  5. オブジェクト指向による分析・設計・プログラミング
  6. 最近のプログラミング環境
  7. ソフトウェアの品質と開発工程
  8. ソフトウェアエンジニアリングの展開

他の入門書に関しては、何をするかというWhatの観点は解説されていますが、なぜその手法・技術が重要なのか、どのような効果があるのかといったWhyの観点は抜けていることがあります。本書では、このWhyの観点についても詳細に記述されており、初学者でも迷わず学習することができます。

情シス・IT担当者[必携]システム発注から導入までを成功させる90の鉄則

本書は、IT担当者や情報システム部向けに、システム発注から導入までのノウハウを提供する書籍です。もちろん、コンサルタントにとっても非常に役立つ内容となっています。実際のシステム導入においては、コンサルタントにベンダーの交渉、開発のPMOなどを任せることも多いからです。

システムの発注から導入に至るプロセスにおいて、失敗を回避し成功を収めるための鉄則を紹介しています。著者は、「失敗の原因はユーザー企業の力量不足」と指摘し、ユーザー企業が過去のシステム導入経験から得たノウハウを体系的に活用することが重要だと述べています。

本書は以下の5章構成となっており、システム開発における一連のプロセスを学ぶことができます。

  1. システムの企画提案からITベンダー選定までのルール
  2. プロジェクト立ち上げから要件定義までのルール
  3. ユーザー受入テストからシステム検収までのルール
  4. ユーザー教育からシステム本稼働までのルール
  5. システム運用と保守のルール

コンサルタントがどのフェーズからアサインされたとしても役立つノウハウを実践的なアドバイスと具体的なケーススタディを通じて学ぶことができます。

システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ

本書は、「システムを作る技術」ではなく「作らせる技術」についての書籍です。コンサルタントであれば、「システムを作らせる」立場で仕事をすることが多く、業務要件をベンダーに正しく伝え、マネジメントしていくことが求められます。

著者は、「業務とシステムはコインの表と裏の関係で、分けて議論することはできない」と指摘し、システムを自ら作れなくても、「システムを作らせる技術」の習得が重要であると述べています。特に企業のDX推進が叫ばれる現代においてはその重要性はますます増しています。

本書ではA~Z章までで、システムに詳しくない業務担当者が新しいビジネスを立ち上げたり、既存の業務を改革したりする際に必要なステップや注意点が詳しく解説されています。著者が20以上にわたり支援してきたプロジェクトでの事例やエピソードが豊富に掲載されており、現場感を理解しながら学習することができます。

見積り

システム開発のための見積りのすべてがわかる本

本書は、システムの見積りについて、基本から従来の手法、さらにはクラウド時代の手法までを幅広く解説しています。また、クラウド環境による開発・インフラのコスト低減、開発ツールの進化など従来のシステム開発環境から大幅に変化した現代においても活用可能な見積り手法を紹介しています。コンサルタントでもユーザー企業に替わって、ベンダーとシステムの見積りの交渉を実施することもあり、見積りの手法を理解しておく必要があります。

本書の構成は以下の3部構成になっており、段階的に理解を深めつつ、現代において通用するシステムの見積り手法を学ぶことができます。

  1. 見積りの基本
  2. これまでの見積り
  3. クラウド時代の見積り

以下の実際に実施したシステム開発事例を取り上げて、どのように見積りを進めたかを紹介する事例・実習編もついています。

  • アジャイルプロセスとインフラにクラウド(AWS)を活用したシステム開発の事例
  • ミッションクリティカルなWebを用いた業務管理システムの開発事例

要件定義

図解即戦力 要件定義のセオリーと実践方法がこれ1冊でしっかりわかる教科書

本書は、システム開発における最初の関門である「要件定義」について、豊富なイラストや表、具体例を用いて解説された書籍です。

著者は、近年の要件定義はビジネスで何を実現すべきかを決定していくという要件定義本来の目的に回帰されるようになったとし、SEの仕事ではなく、若手のエンジニアやコンサルタントでも十分、リードすることができる仕事になっていると述べます。実際、コンサルタントがユーザー企業の要件定義を支援し、ベンダーとやり取りするプロジェクトも多くなってきています。

本書は以下の6章構成で、要件定義の開始から終了まで一連のプロセスを学習することができます。

  1. 要件定義の基礎知識
  2. 要件定義の下調べ・段取りフェーズ
  3. 業務要求の分析・定義フェーズ
  4. 機能要求の分析・定義フェーズ
  5. 非機能要求の分析・定義フェーズ
  6. 要件定義の合意と承認・維持フェーズ

要件定義が図解や事例を用いて解説されているため、初学者が全体像を理解するには最適の1冊です。

設計

ユーザー要件を正しく実装へつなぐシステム設計のセオリー

本書は、情報システムの価値を最大化するために、ユーザーと開発チームとを橋渡しして、「ビジネスの要件を正しくシステムの実装へとつなぐ」ことを目指す手順を示した書籍です。設計はエンジニアの仕事と思われがちですが、要件定義で決定した内容がきちんと反映されているか、確認・フィードバックしていくことが求められます。

本書では、データ、業務プロセス、画面UIなどの設計対象ごとに、概要定義から詳細定義へ、論理設計から物理設計へと進める手順が解説されています。特定の開発手法や方法論に囚われず、知っているべき原理原則や実装技術に左右されない「システム設計のセオリー」が掲載されており、クラウドの時代においても有効な知識を学ぶことができます。

対象とするシステム領域は、「基幹業務系」および「情報系・業務支援系」の企業情報システム(本書ではこれらを「エンタープライズ系システム」と呼称)です。コンサルタントが従事する開発プロジェクトも本エンタープライズ系システム領域が中心になるので、学びになることも多いです。

アーキテクチャー

システム設計の先導者 ITアーキテクトの教科書

本書は、エンタープライズの情報システム開発におけるITアーキテクトのタスクや求められるスキルがシステム開発の工程に沿って、体系的に解説されています。コンサルタントがタスクやスキルを深く理解する必要はありませんが、ITアーキテクトがシステム開発プロジェクトでどのような流れで、何をしているかを把握することで、プロジェクトマネジメントに活用することができます。

本書は、以下の7章構成で、6章までは新規開発プロジェクトにおけるアーキテクトのタスクが成果物の観点から解説されており、7章では、「マイクロサービス」、「DevOps」といった技術に触れられています。

  1. 利害関係者マップと初期アーキテクチャー
  2. アーキテクチャー設計とその分析
  3. 共通コンポーネントと設計基準
  4. アプリケーションフレームワーク
  5. 依存関係変えない保守開発
  6. 留意すべき六つのポイント
  7. 継続開発

データモデル

システム開発・刷新のための データモデル大全

本書は、システム開発や刷新において重要な「データモデリング」に焦点を当てています。データモデリングは、「データの複雑な形」を捉えて図面化する技術です。データベース(DB)で、どのような形(DB構造)でデータを保持するか決める際に必要な手順です。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)において基礎となる技術であるデータモデルについて解説しています。近年、多くの業界や企業で業務システムの刷新が進められていますが、データモデルのリテラシーが不足していることにより、一定以上の複雑な形のデータを扱うシステム刷新プロジェクトが頓挫しています。筆者はユーザー側にもデータモデルの一定のリテラシーが必要とし、業者の設計スキルを測ることを推奨しています。コンサルタントにおいてもそのようなベンダー選定においてデータモデルの基礎的な知識が求められるケースもあります。

本書では、様々な案件に関わってきた著者が、データモデルの読み方と実践的なスキルを解説しています。売上伝票から国家予算まで、様々な情報のモデリングの事例が掲載されています。

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この記事を書いた人

Junyaと申します。都内のコンサルティングファームで働いております。まだまだ若輩者ですが、私の得た経験や感じたことを本ブログで紹介できればと思います。
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