ビジネスの世界ではデータを可視化することで、課題への理解を深めたり、意思決定を促進したりすることができます。本書では、データ可視化に関する方法論を網羅的に学ぶことができます。
本書の概要
本書では、データ可視化とは「データに基づく知的活動や説得を支援するための技術と方法論」と定義されています。また、データ可視化には以下の3つの力があるとされています。
- 視覚優位な特性と外的表象の力を活かす
- 知的活動を支援する
- ストーリーを伝達する
データを可視化することで、人間の知的活動を最大限高めることができるのです。
本書では、基礎編と実践編に分けて、データ可視化する上での方法論を網羅的に学ぶことができます。
基礎編では、そもそもの「データ可視化とは何か」という観点から、どのようなチャート(グラフ、プロット)があるのか、どのような整理のフレームワークがあるのか、どのような手法があるのかという点を学ぶことができます。
実践編では、ゴールを設定し、データを収集し処理するところから以下のような実践例が紹介されています。実践編に関しては少し難易度の高い表現が多いため、自身の課題に即して該当箇所を読んでいくことをおすすめします。
- 数値(How Many)を可視化する
- 言葉(What)を可視化する
- 時間(When)を可視化する
- 場所(Where)を可視化する
- 関係(To Whom)を可視化する
本書を通じて学べる事
そもそも「データ可視化」とは何か
「データ可視化」はビジネスにおいてよく使われる表現ですが、具体的にどのようなものを指すのか曖昧な方も多いのではないでしょうか。
本書では、以下の3つの観点に基づき、「データ可視化」とは何かを解説しています。
- チャートの文法:どのようなチャート(図)を選択するべきか
- 可視化表現の三層モデル:記号的枠組み、知覚的枠組み、慣習的枠組みにおいて可視化された表現は適切か
- コミュニケーションモデル:聞き手、読み手に伝える上で可視化された表現は適切か
データ可視化をする上で、どのような図形、レイアウト、表現があるのかを網羅的に学んだ上で、どのような場面においてどのような表現を用いるのが適切かを理解することができます。
また、課題探索型なのか、表現伝達型なのか、といった点でも効果的に伝えるには表現方法を変える必要があるという点を理解できます。
- 課題探索型:使う人が課題を抱えており、作る人が使う人の代わりにその課題探索の手段として、データ可視化コンテンツを制作
- 表現伝達型:作る人が伝えるべきインサイトをデータから発見し、それを適切に表現伝達する
データ可視化のプロセス
具体的なデータ可視化のプロセスも課題探索型なのか、表現伝達型なのかによって異なります。
ステップ | 課題探索型 | 表現伝達型 |
---|---|---|
1 | 特定分野における課題の定義 | 目的を定める制限を確認する |
2 | タスクとデータの抽象化 | データを収集する データを整理する |
3 | 可視化技法の決定 | データを探索する |
4 | 実装方法の決定 | データを提示するさまざまな方法を検討する |
5 | 課題探索を達成できているかの検証 | 提示方法を洗練させる |
本書では、以下の各プロセスに分けて具体的な実践方法が示されています。自身の仕事などにおいて課せられているテーマに即して実践することによって、適切な可視化表現を実現することができます。
- ゴールを設定する
- タスクを抽象化する
- データの実務知識をおさえる
- データを収集し処理する
- 可視化表現の分類
- インタラクティブに操作する
- レイアウトする
具体的なシーンに即した可視化表現
収集したデータをどのようなチャート(図)で可視化すべきか、本書では5W分類で整理しています。
5W分類
5W分類 | 可視化の種類 |
---|---|
どのくらい | 数値(How many) |
何 | 言葉(What) |
いつ | 時間(When) |
どこ | 場所(Where) |
誰と | 関係(To Whom) |
たとえば、数値(How many)に関しては、数値から捉えたい特徴に応じて表現方法が示されています。
数値(How many)の表現方法
可視化の種類 | 知りたい内容 | チャート | |
---|---|---|---|
数値(How many) | 分布 | 要約値 | ヒストグラム 箱ひげ図 密度プロット バイオリン・プロット リッジライン・プロット |
個別値 | ドット・ドロップ ビー・スウォーム・プロット ストリップ・チャート | ||
内訳 | 円グラフ 100%積み上げ棒グラフ メッコ・チャート ワッフル・チャート 100%積み上げ密度グラフ 半円グラフ | ||
比較 | 3変数まで | 棒グラフ 積み重ね棒グラフ グループ棒グラフ ヒートマップ ブレット・グラフ シンボル・チャート アイソタイプ・チャート | |
多くの変数 | レーダー・チャート ポーター・エリア・チャート パラレル・コーディネイト パラレル・セット | ||
相関関係 | 散布図 バブル・チャート 散布図行列 コレログラム |
自分自身の可視化したいテーマに基づき、適切なチャート・表現方法を調べることができます。
まとめ
データ可視化の分野は体系的に整理されておらず、我流で取り組んでいた方も多いと思いますが、本書では、「何のために可視化するのか」「可視化にはどのような種類があるのか」「自分の可視化方法は適切なのか」といった点を振り返ることができます。
データ可視化を体系的に学びたい方は、是非本書を手に取ってみてください。
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