多くの企業においてデータを活用することが推奨されていますが、具体的にどう進めて良いかわからないという人も多いと思います。本書では、データ収集・分析の前段階である「課題の設定」からデータ利活用の一連のプロセスを学習することができます。
本書の概要
本書では、データ活用とデータ利活用を区別し、データ活用は「今あるデータを活かすこと」、データ利活用は「(今あるデータを問わず)利益になるようにデータを用いて活かすこと」と定義します。
データ利活用が必要であるということは、多くの企業、ビジネスパーソンが認識していると思いますが、特に日本においては上手くいっているケースは少ないように感じます。その要因として、データ利活用に関わる人材の不足が挙げられます。
本書では上記のような課題も踏まえ、以下のデータ利活用の一連のプロセスにおける必要なスキルを学ぶことができます。
- 課題を設定する
- データを収集・蓄積する
- データを加工・分析する
- 適切に伝える
本書の特徴的なポイントとして、データを収集・分析する前段階の「課題を設定する」プロセスについてもカバーしています。きちんと課題を設定しなければ、データ分析の目的が曖昧になり、思ったような成果を生み出すことはできません。本書では、課題を設定するための思考法についても学ぶことができます。
本書を通じて学べる事
マーケティングに関するプロセス・フレームワーク
企業のデータ利活用の目的は「売上を増やす」「費用を下げる」「新規事業を創出する」といったものが挙げられますが、これらはマーケティングの領域に含まれます。マーケティングとは、健全な利益を上げ続けるための「売れ続ける仕組み作り」と定義されます。
データ利活用のための課題を設定するにはマーケティングに関する理解が必要不可欠となります。本書では、マーケティングの基本的なプロセス、データの活用領域、様々なフレームワークが紹介されています。
たとえば、「売上を増やす」といった目的もマーケティングの視点を加えることで、「商品・チャネル・価格・プロモーションのどこに課題があるのか」「競合はどのポジションにいるのか」「どのようなターゲットを狙うべきか」と課題を明確にすることができます。
課題を設定する上で必要な思考力
データを収集・分析する前段階では、課題を設定する必要があります。課題が不正確、曖昧であると、収集すべき情報が間違っていたり、分析方法が不適切であったりする場合があります。本書では、適切な課題を設定するため必要な思考法を紹介しています。
- ロジカル・シンキング、ロジカル・コミュニケーション:物事を論理的に考え、論理的に伝える
- 仮説思考:最初に結論を考えて、その検証・修正を繰り返す
- 問題解決:あるべき姿と現状のギャップを解消する
これらの思考法を身につけることで、本当に解決すべき課題が明確に定義でき、その課題の解決のために必要な情報も明確に定義することができます。
データ収集・分析の方法論
データ収集・分析の手法が網羅的に整理されています。
データの収集方法に関しては、1次データの収集方法についてアンケートやインタビューを実施するための一連のプロセス、注意点が紹介されています。特にアンケートでは、アンケート票の作成方法なども掲載されているため、実践する上で非常に役立つ内容となっています。
データ分析に関しては、分析視点ごとに様々な分析方法、指標が紹介されています。
- 差異(ギャップ):ファネル分析、レート・シェア分析
- 時系列(トレンド):クロスセクション分析、タイムシリーズ分析
- 分布(バラツキ):分散、標準偏差、変動係数
- 相関(パターン):相関係数
上記の他、多変量解析、バスケット分析、テキストマイニングなどデータ分析手法を知ることができます。一方で、それぞれの解説は簡潔なので、実際に用いる場合は各分析手法の専門書などを参照する必要があります。
まとめ
データ利活用の書籍は、データ収集・分析の領域に焦点がいきがちですが、本書はその前段階の課題の設定に関する説明が手厚くなっています。当然ながら課題の設定が上手くいかなければ、データの収集・分析も上手くいかないため、この領域を学ぶことは非常に大きな価値になります。
データ利活用について改めて全体像を理解したいという方は、是非本書を手に取ってみてください。
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