近年、多くの企業においてDXを推進していますが、その多くは失敗しているという現状があります。未経験の領域への挑戦には失敗はつきものですが、その失敗の原因を正確に理解しないと次につなげることはできません。本書では、失敗の真因を分析する方法、失敗事例を用いた活用方法を紹介しています。
本書の概要
一般的なプロジェクトの成功確率は約30%といわれるほど、プロジェクトには失敗がつきものです。しかし、問題は失敗することよりも失敗から学んでいないことです。本書では、多くの企業・組織においてDXプロジェクトの失敗の原因究明ができておらず、失敗から学ぶ習慣がないとします。
本書では、失敗の原因を追究するための「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」を紹介しています。このツールを活用することで、短期間に失敗の真の原因にたどり着くことができるとのことです。
そして、実際のDXの失敗事例に「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」を活用することで、どのような原因で失敗したのか、失敗しないためにはどのような取組みが必要なのかを理解することができます。
本書を通じて学べる事
DXの失敗原因の追究方法
本書では、以下のプロセスにより失敗の原因を追究することを提案します。
- 「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」から全ての失敗原因を抽出する
- 抽出した失敗原因を集約する
- 失敗原因を整理する
- 真の失敗原因を特定する
- 再発防止策を検討し蓄積・活用する
「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」とは、222件の失敗事例から54の失敗原因を抽出したフレームワークで、個人、プロジェクト、組織、未知という4つの分類で失敗原因が網羅されています。このようなフレームワークを活用することで、原因の抜け漏れを防ぎ、メンバー間で認識を一致させやすくなります。
有名企業の失敗原因
本書では、以下のような6分類で様々な有名企業のDXの失敗事例が分析されています。
- 顧客拡大を狙ってセキュリティーレベルを下げたことで招いた失敗:7pay(セブンペイ)、ドコモ口座
- 要望を柔軟に取り入れすぎたことで招いた失敗:LINE Bank、ブルースターバーガー
- パンデミックなどの経済変化を軽視したことで招いた失敗:三菱UFJフィナンシャル・グループのGO-NET
- 文化の違いを軽視したことで招いた失敗:OYO LIFE
- 技術力の過信で招いた失敗:マウントゴックス、Coincheck
- 委託先への仕様丸投げで招いた失敗:野村証券、旭川医科大学
この分析を通じて「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」をどのように活用すべきか理解を深めることができます。また、DXにおいてはどのような点に注意して進めるべきかの示唆を得ることができます。DXとは言ってもシステムに関する問題だけでなく、企業間の体制、パンデミックなどの外的な要因が起因することもあります。そのような視野を広げるためにも本分析は非常に有益です。
DXを失敗しない方法
これまで多くの企業においてDXプロジェクトの失敗が繰り返されてきましたが、その課題としては以下の5つがあるとします。
- 間違った顧客思想
- 想像力不足、コミュニケーション不足
- スコープ不良、標準過不足
- コスト不良
- スケジュール不良
このような課題が事前に予想されるのであれば、対策を打つこともできます。たとえば、「間違った顧客思想」という観点では、プロジェクト開始前に顧客や経営側とプロジェクトのゴールの認識を合わせることが大切になります。そのためには、ヒアリング力やコミュニケーション力を身につけることが必要になります。
失敗のほとんどは過去から発生している既知の事象に起因すると言われています。そのため、社外の色々な事例を理解し、主な失敗の原因を知っていることで事前に予防することができるのです。
まとめ
DXがいつまでたっても進まないという企業は、過去の失敗から学習できていないということがあるかもしれません。本書の「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」を活用し、原因を追究することで次のプロジェクトでの対策を打つことができます。
自社のDX推進に取り組もうとしている方、過去に失敗してしまった方は、是非本書を手に取ってみてください。
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