※2023年2月1日更新
スシローやはま寿司で迷惑行為が発生していることに鑑み、同内容を追記しました。その他、基本情報や業績を更新しています。
庶民の味方である回転寿司チェーンですが、新型コロナウイルスによる影響を受け、2020年度の市場規模は前年度比約3%減の7200億円で、初めて縮小する見込みです。
このような状況を踏まえ、回転寿司チェーン各社は感染症対策を含め様々な戦略を採っています。本記事では主要回転寿司チェーン4社を概観します。
出所:ITmedia記事
基本情報
※2023年2月1日更新
スシロー | くら寿司 | はま寿司 | かっぱ寿司 | |
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運営会社 | 株式会社 あきんどスシロー | くら寿司株式会社 | 株式会社はま寿司 | カッパ・クリエイト株式会社 |
創業・設立 | 1984年6月 | 1977年 | 2002年10月 | 1973年8月 |
資本金 | 1億円 | 20億532万円 | 1,000万円 | 98億円 |
代表者 | 代表取締役社長 堀江 陽 | 代表取締役社長 田中邦彦 | 代表取締役社長 遠藤 哲郎 | 小澤俊治 |
FY2021売上高 | 2,131億円 | 1,477億円 | 1,300億円 | 748億円 |
社員数 (アルバイト・パート) | 1,731名 (46,138名) | 2,185名 (41,339名) | 740名 (34,417名) | 790名 (34,417名) |
店舗数 | 626店舗 | 567店舗 | 555店舗 | 309店舗 |
業績
コロナ禍にもかかわらず、スシローは売上を伸ばしており、くら寿司は「鬼滅の刃」コラボなどの効果により売上の微減する結果となっています。かっぱ寿司は40億円程度の売上の減少となる見込みです。「GO TO イート」や各社の努力により、思った以上に新型コロナウイルスの影響は抑えられているという印象です。
※2023年2月1日追記
スシローについてはコロナ禍による回復の遅れ、不適切な告知を行った事案による影響を受け、客数が大きく減少し、FY2022の国内スシローの業績は予想を下回る結果となりました。
くら寿司については、コロナ第7波の影響を受けながらも、既存店売上はコロナ前の水準まで回復しています。「できたてシリーズ」「極みの逸品」など商品戦略により客単価が上昇、結果としてFY2022の売上は前年比+23.9%と大きく成長しています。
はま寿司も順調に売上を回復させ、コロナ前までの水準に戻っています。
かっぱ寿司については、FY2021はオミクロン株の出現による時短営業要請・外出自粛の影響を受けたため、コロナ前の水準までは回復しておりません。
特徴・近年の動向
テイクアウト・デリバリーの強化などいずれの回転寿司チェーン店においても新型コロナウイルス感染拡大対策が講じられています。コロナ禍にもかかわらず、スシローは海外店舗の強化を達成しているのが特徴的です。
スシロー
新型コロナウイルスへの対応
- 安心して食事頂ける店内環境作りの強化
- セルフレジ/土産ロッカー/自動案内
- TO(テイクアウト)&D(デリバリー)の発展的推進
- デリバリー対応店舗は外部事業者のエリア拡大に伴い、9月末時点で199店舗まで拡大。
- 自社リソースによるデリバリーを関西3店舗で実験開始。
- テイクアウトは専門店方式による発展的取り組みを開始
- 利益確保に拘った徹底したコストコントロール
- 利益確保に拘りコスト管理を更に強化
海外スシロー事業の本格拡大
- 台湾:20店舗(+11店舗)
- 香港:5店舗(+4店舗)
- シンガポール:4店舗(+3店舗)
- 韓国:9店舗(-5店舗)
出所:2020年度通期決算資料
不適切な告知とその改善策
※2023年2月1日追記
スシローでは、2021年9月および12月に実施したキャンペーンにおいて販売停止もしくは品切れしているにも関わらず告知を続け、消費者庁から2022年6月に措置命令を受けています。結果として、客数の減少につながり、売上が予想を下回る結果となりました。
これを受け、スシローでは販促・広告宣伝の変更を掲げております。販促商品の表示基本形を定めたり、アプリにより品切れ情報を確認できるよう改善したりと、対応策を明示しています。
迷惑行為に対する被害届提出
スシロー岐阜正木店で、しょうゆの入った容器のそそぎ口を客がなめるなどの迷惑行為を撮影した動画がSNS上で拡散され、大きな話題となりました。当然、このような行為は顧客側から見れば、不快であり、衛生上の不安も感じ、営業妨害となりうるものです。
スシローは、リリースを出し、被害届を提出したこと、迷惑行為を行った当事者と保護者から謝罪を受けたことを明らかにしました。一方で、対応については「引き続き刑事、民事の両面から厳正に対処する」としています。
くら寿司
感染症対策の推進
『スマートくらプロジェクト』をスタート
コロナ禍においても業績を回復
2020年9月以降、「スマートくらプロジェクト」、大ヒットアニメ「鬼滅の刃」とのコラボキャンペーン、「GO TO イート」効果により前年を上回る水準で回復。
出所:2020年10月期(25期)通期 決算説明資料
はま寿司
新型コロナウイルス感染拡大防止
- タッチパネルで注文した商品だけをお客に提供
- 持ち帰りの海鮮丼や「おうちではま寿司セット」を販売
- 土日祝日の開店時間を変更 受付の“大混雑”を回避
はま寿司/「公式アプリ」開始、順番待ち予約も可能に
- 公式アプリでは、来店日時を設定して予約ができる「日時指定予約」(12人まで)と、店に行かずにアプリ内で案内整理券を発行する「順番待ち予約」ができる
- 持ち帰りネット注文ができ、お得なクーポンを配信するほか、新メニューの告知、近くの店舗も検索可能となっている
迷惑行為に対する被害届提出
※2023年2月1日追記
はま寿司の一部店舗で、他人の注文した商品に無断でわさびを載せる動画がSNSで拡散し、話題となりました。こちらもスシローの事例と同様で、食品の安全を脅かす行為であり、営業妨害となりうる行為です。はま寿司についても、動画を投稿した人物から謝罪したいとの連絡がありましたが、被害届を提出する予定としています。
かっぱ寿司
テイクアウト販売の強化
- テイクアウトメニューの強化
- Web注文のディスカウント
イートイン売上対策の再開
- 7月以降はイートイン売上対策を再開、かっぱ寿司史上初めての「超創業祭」を7月下旬~8月にかけて第3弾まで実施
新たな施策へのチャレンジ
- 一部店舗でのモーニング営業の開始
- グループ会社のバンノウ水産と協働でネットショップ「うまいもん市場」を9月にオープン
- 回転レーン・寿司職人を派遣し、ご自宅で回転寿司が楽しめる「出張回転寿司サービス」を開始
出所:2021年3月期第2四半期決算説明資料
今後の戦略・計画
各社共通の取組みとしては新型コロナウイルス感染拡大対策の継続が挙げられます。また、スシローやくら寿司は今後も店舗を拡大してくことを計画しています。くら寿司、かっぱ寿司などはコラボなどのキャンペーンを強化し、顧客層の拡大を図っていく計画です。
スシロー
国内スシロー事業はコロナ前の成長軌道へ回帰
<新規出店>約30店舗ペースを維持し成長継続
<既存店昨対>“コロナ前+4.2%”の既存店売上を回復
- 商品力の継続強化
- 新価格帯の投入
- TO&Dの更なる強化
- 省人化機器による顧客利便性up
- コスト対応力の維持強化
海外スシロー事業は約10%の売上へ成長
出所:2020年度通期決算資料
くら寿司
V字回復~更なる成長に向け、土台を固める1年に!~Beyondコロナ時代の「新しい生活様式」に最適な店舗スタイルを確立~
主な施策
- 2021年末までに全店舗を「コンタクトレス・タッチレス」化
- 今後の新規店舗はコンタクトレス・タッチレスを含めた「スマートくらレストラン」に
- 出店を加速25店舗以上(都心駅前、未出店エリアなど)
- 旬の極みシリーズの拡充(大人寿司)
- 話題性のあるキャンペーンを継続
- 漁業事業者様との共存共栄への取組みを継続
- 米国は、コロナ後のV字回復に向け出店を継続
- 台湾は、出店を加速(年間5~10店舗)
出所:2020年10月期(25期)通期 決算説明資料
はま寿司
(詳細不明)
かっぱ寿司
メニュー・キャンペーン施策
- 「本格ラーメンシリーズ」 などの他社とのコラボ商品の開発での魅力あるメニュー作りに注力
- アニメなどのコンテンツとのコラボキャンペーンを積極的に取り入れ、お子様連れのファミリー層の誘因、新たな顧客層の開拓を行い、客数アップに繋げていく
地域単位での販売促進活動
- より地域に密着した店舗作りと、局所集中で販促効果を高める目的で、都府県単位での販売促進活動を開始
- 10月に長野県・新潟県で6日間限定で「生本鮪」を販売し、合わせて地方TV局のタイアップで告知を実施
- 今後も順次、内容も検討しながら各地方に展開していく予定
新型コロナウイルス状況下での取り組み
- 店内での感染拡大防止対策を続けながら、早期の業績回復に取り組んでいく
出所:2021年3月期第2四半期決算説明資料
まとめ
2011年かっぱ寿司より回転寿司業界の首位を奪ったスシローの勢いがかなり強い印象です。海外展開にも力を入れており、コロナ禍においてもどんどん店舗を拡大していく積極的な姿勢を感じられます。
今後は安さだけではなく、いかに顧客にとって新しいメニューを提供できるか、付加価値の高いサービスを提供できるかが勝負の鍵となりそうです。
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