地震を対象としたパラメトリック保険

2024年1月1日に最大震度7を記録した能登半島地震が発生しました。震源地近くにおいては大きな被害が発生しており改めて、保険の重要性を認識した方も多いのではないでしょうか。

一方で通常の保険の場合、保険金支払いまで被害額の査定などで時間がかかり、実際に保険金が支払われるのは地震発生からしばらくたった後になります(三井住友海上火災保険では震度6以上の地震被害に対して、保険金の支払に平均200日程度要している)。個人にとっても、法人にとっても、被災直後の一番お金が必要なタイミングでお金が手に入らないのは非常に困ります。

そのような課題の解決策の一つとして、パラメトリック保険(インデックス保険)があります。

パラメトリック保険とは、補償を発動するイベント(トリガーイベント)や補償内容をあらかじめ定めておき、イベント発生時には、定められた一定金額の保険金を支払う保険のことです。これにより、保険金請求処理時間の短縮、より柔軟な補償、確実な保険金支払いを期待することができます。(詳細は下記記事も

あわせて読みたい
パラメトリック保険の市場動向、仕組み、メリット・デメリット、ビジネスモデル、サービス例 近年、異常気象や災害などが多発し、様々な損害をもたらしています。被害に備えるため、損害保険の重要度が増しています。一方で、保険金支払いまでに時間がかかる、支...

本記事では、地震を対象としているパラメトリック保険を紹介したいと思います。

目次

東京海上日動火災保険 -地震に備えるEQuick保険

東京海上日動火災保険では、国内初のパラメトリック保険として「地震に備えるEQuick保険」を提供しています。パラメーターはすべて震度ですが、保険金は閾値、プランによってそれぞれ設定されています。

スクロールできます
エコノミースタンダードプレミアム
保険料2,400円/年4,800円/年9,600円/年
パラメーター震度
閾値:保険金震度7:20万円
震度6強:5万円
震度6弱:-
震度7:25万円
震度6強:10万円
震度6弱:5万円
震度7:50万円
震度6強:20万円
震度6弱:10万円
東京海上日動火災保険

震度は、気象庁が公表する、市区町村単位の震度情報「震源・震度に関する情報」に基づき判定されます。地震発生後、保険金受取に関する案内メールが届き、住所、保険金受取口座の確認を行うと、最短3日で保険金を受け取ることができます。

三井住友海上火災保険 -震災クイックサポート

三井住友海上火災保険は、中小企業向け火災保険において、震度に応じて定額保険金を支払う「事業をとめない 震災クイックサポート<インデックス保険>」の販売を開始しています。

あわせて読みたい

事業活動総合保険の休業損害補償条項に「地震災害時緊急費用等保障特約(震度連動型)」をセットして引き受けを行う。震度6以上の地震を対象に、保険の対象の所在地の観測震度に基づき、実際の損害の程度にかかわらず、定額保険金を支払います。

スクロールできます
震災クイックサポート
保険料特約保険料は保険の目的の所在地(都道府県ごと)により異なる
パラメーター震度
閾値:保険金震度7:保険金額の100%
震度6強:保険金額の30%
震度6弱:保険金額の10%
三井住友海上火災保険

以下、保険料について示されている例です。

スクロールできます
業種粗利益日額保険金額所在地保険料
製造業40万円1,000万円東京都70万円
飲食サービス業20万円300万円大阪府15万円
卸売業・小売業10万円100万円福岡県2万円
三井住友海上火災保険

スイス損害保険会社 -事業継続費用保険金

スイス損害保険会社は、企業向けに地震の震度に応じて定額の保険金を支払う事業継続費用保険をパラメトリック型保険で提供しています。こちらの商品については、各企業個別に保険金の見積が行われるもののようですが、実際に国内でも支払いが行われた事例があるようです。

あわせて読みたい
スクロールできます
事例①事例②
時期2022年3月16日2021年2月13日
イベント福島県沖を震源としてマグニチュード7.3の地震が発生し、宮城県と福島県で最大震度6強を観測マグニチュード7.3の地震が発生し、気象庁の福島県郡山市朝日の観測地点で震度6弱を計測
被害地震の影響により工場の一部で火災が発生し、被災したラインの操業停止地震により、施設に物的損害を与え、非契約者の工場は一定期間、操業停止
保険契約震度6弱以上の地震で保険金支払が行われる契約に加入震度6弱以上の地震で保険金支払が行われる契約に加入
保険支払い地震発生から約2か月後に保険金をお支払い気象庁による火山・地震月報公表の3日後(地震発生から44日後)に支払い

Jumpstart(米国)

Jumpstartの地震保険では、パラメーターと閾値を次のように定め、補償を行います。

スクロールできます
パラメーター表面最大加速度(peak ground velocity)
閾値ワシントン州・オレゴン州:秒速20cm以上
カリフォルニア州:秒速30cm以上
保険金個人向け:$10K
中小企業向け:$20K
Jumpstart

第三者機関である米国地質調査所によって測定されたデータに基づき、条件を満たしたかどうか判断されます。

地震が発生し、条件を満たす地域に所在していた人にテキストメッセージが自動で配信され、保険金が必要だと返信すると即時に受取ができます。

まとめ

被災後に保険金がいかに早く支払われるかは、多くの人にとって重要な問題です。特に資金繰りの厳しい中小企業においては事業継続を左右します。パラメトリック保険はそのような早期にお金を受け取りたいという個人・法人のニーズを満たすソリューションでしょう。今回の地震を受け、今後もそのニーズは大きくなってくると思います。

一方で、2024年1月6日に発生した地震のように震度計の異常が疑われる場合もあり、パラメトリック保険で適切な保険金支払いを行うためには、パラメーターを高精度で測定する仕組みを併せて整備する必要がありそうです。

NHKニュース
石川 志賀町震度6弱と発表 気象庁 “地震計に異常ないか調査” | NHK 【NHK】気象庁は6日夜遅く石川県志賀町で震度6弱の揺れを観測したと発表しました。震度6弱は1か所だけで周囲の震度3と開きがあり、…
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Junyaと申します。都内のコンサルティングファームで働いております。まだまだ若輩者ですが、私の得た経験や感じたことを本ブログで紹介できればと思います。
Xで更新情報をお届けします。是非フォローしてください。

コメント

コメントする

目次