本書の概要
本書はいわゆる思考法の本ですが、特徴は分かりやすく、すぐにでも実践できるテクニックが紹介されていることです。思考法の本というと理論的な解説が長々と書かれている本も多いのですが、本書ではそのような説明は必要最低限で、本当に役に立つものだけが紹介されています。イラスト、図解も豊富で非常に読みやすいのも特徴なので、高尚な思考法の本で挫折してしまった人などにおすすめです。
著者のプロフィール
著者はグロービス経営大学院大学教授の嶋田 毅氏です。
富山県出身。富山県立富山中部高等学校を卒業。東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。 戦略系コンサルティングファームに入社、業界・企業分析や戦略の立案、実行支援を行う。 その後、外資系理化学機器メーカーを経てグロービスに入社、主に出版、コンテンツ開発、ライセンシングなどを担当する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B6%8B%E7%94%B0%E6%AF%85
現在グロービスメディア事業推進室マネジングディレクター、グロービス経営大学院大学教授。 グロービス経営大学院や企業研修において管理会計、定量分析、経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン等の講師、自社課題アクションラーニングのファシリテーターも務める。
本書を読んだきっかけ
本書を読んだきっかけは、ある程度思考法の基礎を身に付けたので、より実践的なテクニックを学びたいと思ったことです。特にすぐに実践して役に立つテクニックを学びたいと考えていたため、「めくるたびに頭の回転が速くなる!」というキャッチコピーに魅かれ、本書を手に取りました。グロービス出版ということなので、内容に関しては信頼ができると思いました。
本書のポイント
本書では、「基礎編」、「応用編」、「発展編」、「日常の習慣編」の4つのパートに分かれ、33のテクニックが紹介されています。その中で重要と思った3つのテクニックを紹介したいと思います。
軸を動かして考えるコツ
商品やサービスには一定の軸が存在します。例えば、自動車であれば、軽自動車、普通自動車、大型自動車といった形で大きさの軸があります。このような世間一般に通用する軸の中間を探ったり、より大きい方向またより小さい方向に移動したり、あるいは、新しい軸を考えたりすることが新しい商品・サービスを生み出すヒントになります。自動車ですと、軽自動車より小さい超小型モビリティが近年になり、開発されています。これは軸をより小さい方向する例です。新しい軸ですと、自動車のエネルギーという軸で、ガソリンだけでなく、水素、電気などで走る自動車が開発されています。
このように現在一般的に通用している軸について、軸を極端に動かしたり、新しい軸を見つけたりすることにより、新しいアイデアの着想を得ることができます。多くの人は既存の枠組みの中で考えることに慣れてしまっているため、なかなか軸を動かすということが難しいと思いますが、軸の常識を疑うことから始めるのが良いと思います。
「根源」を考えるコツ
多くの人は仕事・生活の中で色々な問題に直面していると思います。そのような問題について、根源的な原因を見極め、その原因に対策を打つことが重要になります。身近な例ですと、最近太ってきたという問題でも、「なぜ」、「なぜ」を繰り返し、原因を追究すると自分ではなく上司が原因になっている可能性もあります。
1か月で体重が5kgも増えてしまった
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間食に甘いものを食べる回数が増えてしまった
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日中疲れてしまい、どうしても甘いものが欲しくなる
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業務が多く、疲労が溜まってしまっている
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自分自身の能力を超える業務を任せられてしまっている
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上司のタスクマネジメントが上手くいっていない
このように真の原因を特定しないと、問題の根本的な解決はできません。そのため、問題の表層的な部分だけを見て満足するのではなく、「本当にそれが原因か?」、「先行する原因はないのか?」などを自問する癖をつけましょう。
アウトプットしながら考えるコツ
アウトプットするということはインプットした内容を身に付けるために非常に重要です。逆に言えば、アウトプットにつなげないインプットは結果的にすぐに忘れ去られたり、劣化したりしてしまいます。極端な例ですが、自動車の運転をしようと思って自動車学校の教本だけを読み込んでも運転は決してうまくはなりません。実際にハンドルを握り、運転をしなければ教本で読んだ内容は身に付かないのです。これは自動車の運転だけでなく、他の学問、ビジネスにおいても同様です。
そしてアウトプットも、他人に見せる、あるいは、他人に見せる前提で行うことが重要になります。他人に見せるために資料などを作成するのであれば、きちんと相手に伝わるように表現、情報の精度にこだわります。そのために思考することによって、インプットをきちんと理解することができるのです。また、他人にアウトプットを見せることで、色々な意見をもらうことができます。それが、更にインプットとなり、次のアウトプットにつなげることで、アウトプットが洗練されていくのです。
本書を読んだ上での実践
「考える」を考える
まず、物事を考える際に無意識に考えるのではなく、どのような思考法を用いて考えているかを意識したいと思います。思考法をきちんと整理することで、相手に自分の考えを伝える際もより説得的に伝えることができます。また、自分自身の考え方が明確になれば、同じような問題に直面したときに過去の考え方を活用することができます(再現性)。
このように「考える」を考えるということは、自分自身の思考法を確立させ、相手を納得させるために非常に重要になるので、まずは日々の生活の中で実践したいと思います。
常識を疑う
人は物事を考える際に既存の枠組みや常識の中で考えてしまいがちです。その方が、考えるのが簡単で、間違えることも少ないという点があるからです。しかし、それではありきたりな誰でも思いつくような考えしか出てきません。創造的な新しいアイデアを出すためには、上記の軸を動かすといった方法以外に、極端なケースで考える、アノマリー(法則や理論から合理的な説明ができない現象)で考える、といったテクニックが紹介されていました。
新しい軸・観点で物事を見ることによって、新しい発見、独創的なアイデアを生み出すためのヒントを得ることができます。そのため、今ある常識を「本当に正しいのか?」と疑うことを意識して日々の問題に取り組みたいと思います。
下記記事ではこの考え方に近い「妄想力」について解説しています。
アウトプットする
最後にアウトプットするということを日常的に心がけたいと思います。上記の通り、アウトプットにはインプットを身に付けるのに役に立ちますが、それ以外にも、記憶をとどめておくためにも役に立ちます。人は忘れる生き物なので、何かアイデアを思いついたとき、思考の経緯とともにメモをしておくことによって、自分自身の発想として記録しておくことができるのです。
また、アウトプットの形式にもこだわりたいと思います。単純なテキスト(文字)だけでは思考は活性化しない場合もあります。アイデアや情報をわかりやすい図、グラフ、絵にすることによって、新しい考えを思いついたり、他者から別の示唆をもらったりすることができます。
アウトプットを積み重ねることにより、思考法はどんどん洗練されていき、アウトプット自体の質もどんどん向上していくので、インプットしたら必ずアウトプットするというのを癖付けたいと思います。
まとめ
本書では明日にでも活用できるような思考法のテクニックが多く紹介されていました。私自身もそうですが、情報が溢れている現代社会では、考えることが苦手な人が多いように思います。考えたとしてもきちんと思考が整理されていない場合も多いです。本書を読み、「考える」を考えることは日々のビジネス・生活をより生産性高く過ごすうえでも重要であると感じました。
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