日本でもフィットネスブームが来て、色々な企業がジムの運営に取り組んでいます。ただ一口にジムの運営といっても企業ごとに色々な特徴があります。
そこで、本記事では、フィットネス・ジムのビジネスモデルを改めて振り返った上で、各社の業績や特徴などについて見ていきたいと思います。
フィットネス・ジム業界の市場規模については下記の記事も参考にしてみてください。
ビジネスモデル
フィットネスクラブ・ジムの主な収益は、会費収入、利用料金収入、食堂・売店売上高の3つです。
会費収入が、ジムに入会後、定期的に支払う会費です。
利用料金収入がパーソナルトレーニング、スタジオなどのサービスを利用した際に支払うものです。
食堂・売店売上高が、ジムで販売されているプロテインやトレーニング用具などの購入代金です。
下図は、国内のフィットネスクラブ・ジムの売上高の内訳を示すものですが、9割近くが会費収入となっています。
フィットネスクラブ・ジムのビジネスモデルは、直営店かフランチャイズ店かにより異なります。
直営店の場合、運営会社が出店し、従業員・設備の手配を行います。直営店では、利用者より得られた会費・利用料の全てが運営会社の売上となります。
一方で、フランチャイズ店の場合は、運営会社よりブランド・ノウハウの提供を受け、フランチャイズ店自身で従業員・設備の手配を行う必要があります。ブランド・ノウハウの提供を受ける代わりに利用者より得られた会費・利用料の内、一部をロイヤリティとして運営会社に支払うことになります。
全国的に展開しているフィットネスクラブ・ジムの運営会社はフランチャイズ方式を採用しています。その方が効率的に広い店舗展開が可能だからです。
各社の特徴
国内の主要なフィットネス・ジムを運営する会社の特徴と業績をまとめました。
主なクラブ・ジム、売上、施設数、会員数は下表の通りです。
会社 | 主なクラブ・ジム | 直近売上 | 施設数 | 会員数 |
---|---|---|---|---|
コナミスポーツ株式会社 | コナミスポーツクラブ | 420億円 | 383軒 | 不明 |
セントラルスポーツ株式会社 | セントラルスポーツ | 403億円 | 241軒 | 34.2万人 |
株式会社ルネサンス | ルネサンス | 371億円 | 190軒 | 33.3万人 |
株式会社THINKフィットネス | ゴールドジム | 175億円 | 88軒 | 不明 |
株式会社ティップネス | ティップネス | 234億円 | 57軒 | 不明 |
株式会社カーブスホールディングス | カーブス | 275億円 | 1,985軒 | 69.4万人 |
株式会社Fast Fitness Japan | エニタイムフィットネス | 131億円 | 1,002軒 | 64.5万人 |
株式会社東祥 | ホリデイスポーツクラブ | 122億円 | 101軒 | 不明 |
RIZAPグループ株式会社 | RIZAP | 448億円 | 168軒 | 17.6万人(累計) |
コナミスポーツ
概要
コナミスポーツはコナミスポーツクラブ、グランサイズ、エグザスの3つのスポーツクラブを運営しています。その他、公共スポーツ施設の管理、運営、スポーツ・健康関連のコンテンツの提供などを行っています。
コナミスポーツクラブの特徴は、全国に展開しており、老若男女どのような運動習慣の人にも適した施設、プログラムを提供しています。直営店の他、フランチャイズ店も展開しており、幅広い地域への店舗展開を可能としています。
また、スイミングスクールでは、「運動塾デジタルノート」を導入し、映像とAIを活用し、アクティブラーニング(考えて行動する力)を向上させる取組を行っています。
このようにテクノロジーを活用し、運動効果を向上させる取組も進めています。
業績
新型コロナウイルスの影響を受け、2021年3月期には売上が大きく減少しており、2021年2月には直営施設9店舗、5月には16店舗を閉店しております。2022年3月期の売上は420億円まで回復したものの、コロナ前の水準までは届いておりません。
施設数は2022年9月30日現在で、383施設(直営:153施設 受託:230施設)です。
セントラルスポーツ
概要
セントラルスポーツは、スポーツジムセントラルスポーツを運営する他、スパ・温浴施設、エステティックサロン、ボディケアルーム等を提供しています。
セントラルスポーツは3つの約束として以下を掲げています。
- 4世代がつながるコミュニティ
- ライフスタイルに合わせて選べる
- たしかな知識で効果を実感
老若男女それぞれのニーズ、ライフスタイルに合わせてフィットネスプログラムを選択できる点が強みです。また、1982年に民間フィットネス業界初の研究所、セントラルスポーツ研究所を設立し、発育発達、健康増進、競技力向上等に関する研究を行っております。
近年ではオンラインサービスの提供やジムスモ、Beauty Projectなど個人のニーズに合わせたオリジナルプログラムの拡充に取り組んでいます。
業績
新型コロナウイルスの影響を受け、2021年3月期には売上が360億円と大きく減少しており、2022年3月期の売上は420億円まで回復したものの、コロナ前の水準までは届いておりません。
セントラルスポーツの店舗数は2021年度で241軒(直営店181軒、受託店60軒)となっています。その他提携店舗が266軒あります。コロナ禍により退店が相次いだことにより、2020年度から延べ5軒減少しています。
セントラルスポーツの会員数は34.2万人です。会員の平均年齢は54.6歳と比較的高いことが特徴です。また、男女比率は男性51.8%、女性48.2%とほぼ半々となっています。
ルネサンス
概要
ルネサンスは、「生きがい創造企業」を理念にスポーツクラブの展開の他、健康づくり支援、店舗運営コンサルティングなど、様々な事業を展開しています。
スポーツクラブの展開においては、以下のような様々なタイプのスポーツクラブを展開しています。
- スポーツクラブ ルネサンス
ジム・スタジオ・プール・テニスコート・ゴルフレンジ等の設備とともに、サウナ・お風呂・ジェットバス・マッサージチェアなどのリラクセーション設備を完備した総合型スポーツクラブ - ジム&スタジオ ルネサンス
初心者の方でも気軽に安心して通える、アットホームな「ちょうどいい」フィットネスジム。外履きシューズのまま24時間いつでも利用でき、運動メニューも一人ひとりに合ったやり方をトレーナーがアドバイス - 女性専用フィットネススタジオ「バニスタ」
女性の感性にお答えし、安心して参加できる、女性専用のフィットネス施設 - BETTER BODIES HI AOYAMA
短時間・高効率なトレーニングによって成果を最大限に引き出すグループワークアウトスタジオ。キャッチフレーズは、『人はカラダも、生き方も、変われるようにできている。』 - コクール ルネサンス
都市型フィットネスクラブ「Coqul RENAISSANCE(コクール ルネサンス)」。最新のトレーニングマシンや最先端のグループエクササイズや、心やすらぐスパ・ラウンジなど
また、各ジムにおいては、スタジオプログラムのWeb予約システム、キャッシュレス決済サービス、オンラインフィットネス、忘れ物管理アプリなど、テクノロジーを活用し、利用者の利便性向上や業務効率化を取り組んでいます。
業績
新型コロナウイルスの影響を受け、2021年3月期には売上が302億円と大きく減少しており、2022年3月期の売上は371億円まで回復したものの、コロナ前の水準までは届いておりません。
店舗数についてはコロナ禍においては一時閉店が加速し、出店が鈍化したものの、2021年度には再び出店が加速し、190店舗に達しています。
会員数は2021年度で、フィットネス16.2万人、スクール15.4万人となっています。全体の割合としては少ないものの、オンラインは2020年度の0.3万人から1.7万人に増加しており、オンラインフィットネスの需要が徐々に高まっていることがわかります。
THINKフィットネス
概要
THINKフィットネスは国内のゴールドジムを運営する会社です。その他、フィットネス用品、サプリメントの販売を行っております。
ゴールドジムは、シリアス・フィットネスを強く志向しており、より本格的にトレーニングをしたい人にとって十分な設備、経験豊富なトレーナーが在籍しているのが特徴です。店舗数に関しては88軒とそれほど多くはありませんが、他社との差別化によりコアな利用者を多く集めています。
2023年のオリコン社調査の顧客満足度では、総合1位を獲得しており、全9つの評価項目では、「入会手続き」「プランの豊富さ」「コストパフォーマンス」「衛生管理」「施設の充実度」「インストラクター」「スタッフ」「サポート体制」の8項目で1位を獲得しています。
業績
フィットネス用品、サプリメントの販売も手掛けており、店舗数に対して売上は175億円とかなり大きいです。新型コロナウイルスの影響を受け、2022年2月期の売上はコロナ前の水準までは届いておりません。
ティップネス
概要
ティップネスは、生活様式に合わせて、以下のスポーツクラブを運営しています。
ティップネス:総合型ジムで、様々なトレーニングマシン、プール、サウナ等の設備があります。筋力トレーニング、有酸素トレーニング、ヨガ・ピラティス、ダンス、格闘技、スイミング等のプログラムを利用することができます。
FASTGYM24:24時間ジムで比較的な小規模な店舗ですが、安価に利用できるジムです。首都圏を中心に100店舗近く展開しており、駅前でアクセスの良い店舗が多いです。
ティップネス・キッズ:0歳から15歳を対象とした運動スクールで、身体育成と児童心理の両理論と経験に即した科学的なプログラムを提供します。スイミング、ダンス、バレエ、新体操、サッカー、空手、スカッシュ等の非常に多岐にわたるスポーツを対象としています。
ティップ.クロス TOKYO:スタイリッシュな空間とコンテンツで理想のカラダへ導く最高のフィットネスクラブ。
ティップネス 丸の内スタイル:“Body&Mind”と“Work&Life”のパフォーマンスをサポートするフィットネスクラブ。
HOTLUX:ココロとカラダに深いRelaxとRefresh。女性のための富士山溶岩スタジオ。
torcia(トルチャ):一流インストラクターや有名人によるオンラインレッスンを提供します。プログラムは、ストレッチ、ヨガ、筋トレ、ダンスなどの多彩なラインナップを毎月600本を用意しています。
業績
ティップネスの売上は、新型コロナウイルスの影響を受け、2021年3月期には206億円と大きく減少しています。ティップネスは2014年に日本テレビに買収されており、それ以降売上・利益ともに減少傾向にあります。スポーツジムの経営ノウハウがうまく引き継がれず、コロナの打撃も重なり、経営状況はあまり良くないといえます。
カーブスホールディングス
概要
カーブスは「女性だけの30分健康体操教室」として、「手軽に、誰でも、何歳でも」「1回わずか30分、予約不要」で運動をしていただくことのできる施設を提供します。女性をターゲットにしており、気軽に運動できることをコンセプトに他社との差別化を図っています。
筋トレやダイエットというよりも健康を維持するという側面が強く、利用者も50歳以上の女性が多いようです。
今後も団塊世代やその次世代層(55~64歳)を中心にターゲットを拡大していく戦略です。
また、新たにメンズ・カーブスを展開し、男性にもターゲットを拡大しています。
業績
カーブスの2022年8月期の売上は275億円です。コロナ禍で一時減少したものの、コロナ前の水準までほぼ回復しています。
食の相談・提案を強化したことによる会員向けの物販の売上が伸びているようです。
店舗数は約2,000軒と他社と比べてもかなり多いです。気軽に通えるというコンセプトのもと、積極的に店舗展開を行っています。
会員数は約70万人で、女性×50歳以上とターゲットを限定していますが、ターゲット層において多くの支持を得て多くの会員数を獲得しています。
Fast Fitness Japan
概要
Fast Fitness Japanは国内の24時間ジムエニタイムフィットネスを運営する会社です。エニタイムフィットネスは米国発のトレーニングジムですが、2010年に国内1号店がオープンした後、全国に拡大し、現在では1,055店舗を構えています。
特徴としては、24時間年中無休で利用できること、マシンジム特化型で自由にトレーニングができること、全国のエニタイムを利用できることです。このような特徴から、仕事などで日中通いづらい若年層の男性に特に人気を集めています。
2023年のオリコン社調査の顧客満足度では、24時間ジムの総合1位を獲得しています。全6つの評価項目では、「入会手続き」「衛生管理」「施設の充実度」「通いやすさ」「セキュリティ体制」で1位を獲得しています。
業績
コロナ禍においても売上を維持しており、会費収入による収益力の高さがわかります。直営店だけでなく、フランチャイズ店舗のロイヤリティ収入により安定的な収益を維持しています。
エニタイムフィットネスはコロナ禍にも店舗数を拡大しており、2021年度においても100店以上の出店数を維持しています。2021年度には第1号店出店から11年半で1,000店舗を達成しています。
会員数についてもコロナ禍で一時減少したものの、2021年度には64.5万人と過去最高を記録しています。
東祥
概要
総合型ジム「ホリデイスポーツクラブ」を全国で101店舗を展開。16歳以上の大人に特化した会員制スポーツクラブとして、「大人の健康」をキーワードに「遊ぶ・楽しむ・フィットネス」を基本コンセプトとしてジム、スタジオ、プール、リラクゼーションの4つの施設を提供します。
また、施設だけでなくパーソナルトレーニングを提供しており、筋トレ、ヨガ、ダンス、水泳、ボディケアなど様々なラインナップを用意しています。
業績
新型コロナウイルスの影響を受け、売上が大きく減少しており、2022年3月期も122億円と成長が鈍化している状況です。一方で、店舗運営を見直すことで会員数が減少する中でも単月黒字化を達成しています。
店舗数は101店舗と他社と比較しても少なめです。
RIZAP(ライザップ)
概要
専属トレーナーが、一人一人についてトータルボディメイクを実現するRIZAPを運営しています。入会金50,000円とコース料金という料金体系で、一人一人の目的に応じたトレーニングプログラムを提供します。完全個室でのマンツーマンレッスンなので、「密」を回避してトレーニングすることができます。
「脂肪は減らす、筋肉は減らさない。」トレーニング法で、健康的に理想の体型を実現することをコンセプトとしており、無理せずボディメイクを実現したい人にとっておすすめです。
また、24時間ジムchocozapをオープンしました。月額2,980円という価格で通うことができ、短時間で気軽に運動できることが特徴です。トレーニングマシンだけでなく、セルフ脱毛、セルフエステのマシンがあり、美容にも力を入れています。
業績
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言・外出自粛を受け、売上が減少しています。
コロナ初期から店舗の統廃合を推進したことにより、店舗数は減少していますが、稼働率の向上により収益性の改善を実現しています。
累計ですが、会員数は17.6万人と順調に会員数を増やしています。完全個室マンツーマンという体制により、安心して通えるという点で会員数を維持・拡大し続けています。
まとめ
以上、フィットネス・ジムのビジネスモデルと各社の特徴を見てきました。
画一化しやすいビジネスモデルですが、各社がターゲットやサービスなどを工夫することで差別化に取り組もうとしていることがわかります。
ユーザー目線ではサービスが多様化することによって、より自分の目的に合ったジムを選択できるので、非常に良いことだと思います。
新型コロナウイルスの影響により、健康意識の高くなった人は多く、そのような人をターゲットとして、今後も各社様々な取り組みを行っていくことが期待されます。
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